第62話

次々兵士を暗示にかけて気絶させていくクリス、華麗に敵の剣をかわしては拳を入れて倒していくノアとアダム、ちょっと腰が引けてるけど頑張ってるイヴ。


 どうやら吸血鬼の皆さんは、拳で戦うのがスタイルのようだ。敵がヒカリモノ(※刃物のこと)を使っても潔く素手喧嘩ステゴロとは、特攻服を着るのに相応しい方々!


 吸血鬼は人間より遥かに強いと聞いていた通り、腕力から違うのか、みんな段違いの戦闘力だ。


 見てて安心感はあるんだけど、兵士が次から次へと襲いかかるから苦戦してるみたい。


 そしてレオンはギルバートさんと睨み合いながら、タイマンを張っている。こちらは圧倒的にレオンが劣勢だ。殴りかかってはかわされて、拳を叩き込まれている。


 お互い吸血鬼な上、レオンは兄であるギルバートさんに勝ったことがない。その情報通り、レオンは血反吐を吐きながら次第にぼろぼろになっていく。一方的なリンチみたいだ。


 強く殴られたレオンが地面に倒れ込んだ時、私は彼が死ぬんじゃないかと恐れ始めた。吸血鬼は頑丈とは聞いたけど……。ノア達もレオンを気にしてるみたいだけど、兵士の対応で手一杯。


 ギルバートさんは倒れたままのレオンを冷たい目で見下ろす。


「諦めろ、おまえでは私に勝てない」

「……ミナを返せ」

「負け犬に返すものなどない」


 腕に力を込めて、レオンは立ち上がろうとしている。動いた拍子に多量の血を吐くのを目の当たりにして、私は息を呑んだ。


「レオン、やめて! もういいから!」


 思わず必死で叫んでいた。レオンが死ぬくらいなら、私が幽閉された方がましだ。ギルバートさんも深く頷く。


「ミナの言う通りだ、そのまま寝ていた方がいい。立つなら殺すぞ」


 私の願いも虚しく、レオンはよろけながら立ち上がって、口元の血を袖で拭った。

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