第61話

「ご立派な王室近衛騎士長さんのお仕事は、女を攫うことか? お忙しいことだな」


 レオンは鼻で笑いながら言うと、ポケットに手を突っ込み、ギルバートさんを睨みつけた。眉を寄せて、番長さながらの迫力でメンチを切る。


 私は状況も忘れて、感極まりながらそんなレオンの姿に見惚れた。完璧だ! すごくすごく格好良いし、様になってる。やっぱりレオンには、特攻服がよく似合う!!


「ミナ、守れなくてごめん! この服、ボクの分までありがとう!」


 私に向かって叫ぶクリスに、コクコクと頷く。クリスも意外と似合ってる。スケバンって感じだ。


「ミナ様! 待っていてください、俺たちが今助けますから!」


 アダムの叫び声に、イヴとノアが深く頷く。勇ましい表情のアダム、ちょっと不安げなイヴ、そして落ち着き払ったノア。特攻服を着こなして、真っ直ぐ私を見るノアが頼もしい。


 それまで黙っていたギルバートさんは、ようやく訝しげな顔で口を開いた。


「レオン。なんだそのふざけた格好は。仲間と集まってお遊びごっこか?」

「これがアスター騎士団の団服だ」


 ギルバートさんは声を出して笑った。


「馬鹿が。昔は素直で可愛かったものだが、成長して頭がおかしくなったようだな。流石、不良侯爵の呼び名は伊達ではないようだ」


「なんとでも言え。ミナは返してもらうぞ。……コソ泥みたいな真似しやがって。俺に喧嘩売ったってことでいいんだろうな、ギルバート!」


「おまえは関係ない。女王陛下の命令に従っただけだ。世界はおまえを中心に回っているわけじゃないぞ、レオン。捕虜を奪還するつもりなら容赦はしない。おまえ達は女王陛下の敵だ」


 ギルバートさんのその台詞を合図にして、喧嘩……もとい、戦いが始まった。

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