第60話

翌朝、ギルバートさんは険しい顔で部屋に入ってくると、私の両手を後ろ手に縛り上げた。促されるまま扉に向かう。


「どうしたんですか? 解放してくれるんですか?」

「レオンが数名の仲間を引き連れて、おまえを救出に向かって来ているらしい」

「えっ!?」


 驚きと歓喜の混じった声が出た。


「このまま幽閉では哀れだからな。しっかり見届けろ。レオンがおまえのため命を散らす様を。それを糧にここで生きていけ」

「命を散らす……?」


 不穏な台詞にどきりとした。レオンを殺すつもりなのだろうか。実の兄と言っていたのに。


 窓の少なさの所為で薄暗い螺旋階段を降りて、塔の外に出た。待機していた兵士に槍を突きつけられながら、ギルバートさんに続いて頑丈な城壁を抜ける。


 どうやら私がいたのは、大きな川のほとりの塔のようだ。城壁の外側、川沿いの通りには、ギルバートさんと同じ、赤マント黒カソックを着込んだたくさんの兵士たちが待機していた。


 しばらく待っていると、やがて遠くから聞き覚えのある爆音が聞こえてくる。黒煙と白いスチームを巻き上げる、複数のバイクが小さく見えてきた。


「レオン……!?」


 レオンの姿を捉えた私は驚愕した。バイクに跨る、特攻服を着込んだその姿。レオンだけじゃない。ノア、クリス、アダムとイヴ。全員が私の作った特攻服だ。


 バイクを停めて降りた5人は、立ち塞がるギルバートさん、兵士たちと対峙した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る