第57話
空白だけの夢から覚めて、意識が戻ってくる。目を開けると、薄暗い部屋が目に入った。
白塗りの壁と天井。高い位置にある小さな窓には鉄格子。そこから入ってくる僅かな光はまだ昼間のようだけど、室内は夕方くらいの明るさしかない。
私は寝かされていたベッドから身を起こす。
こじんまりとしたテーブルにチェア、本棚にずらりと並ぶ本、壁に飾られた誰かの肖像画。四方に設置されたランプにぼんやりと照らされて、どこか不気味な部屋だった。
ふと、鍵が開く音が聞こえた。重たそうな扉を開けて入ってきたのはギルバートさんだ。
「目覚めたか」
「ここはどこですか?」
「幽閉塔だ」
「幽閉塔……?」
「召喚士と名乗る集団は、おまえを殺せと主張している。気が触れた奴らが何を企んでいるかわからない以上、おまえを殺すことはできない。が、野放しにもできん。結果おまえはここで一生幽閉……飼い殺しということだ」
衝撃を受けて固まる私を、ギルバートさんは無表情で見遣る。
「そんな顔をするな。地下牢と違い、ここは身分の高い者が幽閉される場所……外に出られないことを除けば、それなりに快適な暮らしができる。おまえが退屈しないように、私も努力しよう。好きな書物等あれば教えてくれ。入手して持ってくる」
意外にも優しい声と台詞に、私は思わずギルバートさんをガン見してしまった。変わらず無表情だ。ぐっと拳を握りしめて、その無表情を見つめる。
幽閉? 冗談じゃない。やっと特攻服が完成したっていうのに。私はまだ夢を叶えてない。レオンに着てもらうまで、絶対に諦めない!
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