第50話

尤もな疑問だ。ノアやアダム達から見れば、昼間いくらでも時間があるのにと思うだろう。だけど私はお気楽にやってるわけじゃないのだ。


「このままじゃ、いつまでも上手くならないと思ったから。私は一日も早く、このミシンを使いこなしたい」

「ミナ、おまえはどうしてそこまで必死になる」


 私をじっと見るレオンを、真っ直ぐ見返す。


「私は夢のために生きて来たの。叶えるって決めたんだから、叶えるまでは手を抜かない。私はいつも全力で、夢に向かってたいから」


 そんなの意味ないとか、変な夢とか馬鹿みたいとか、色々言われたこともあるけど、誰にも文句は言わせない。私が決めた夢だから、大切な夢なんだ。


 全員があっけに取られたように私を見て、一瞬、しんと部屋が静まり返る。


「……がむしゃらで一直線なおまえらしいことだ。せいぜい頑張るんだな」


 どこか嬉しそうに鼻で笑い、レオンは部屋を出ていった。


「ミナ様、僕らも今まで以上に協力しますから、どうか危ないことはおやめください」

「イヴ、おまえ立場を弁えろ、口を挟むな」


 おずおずと意見したイヴを、アダムが慌てて制する。


「申し訳ありません、ミナ様。イヴが生意気な口を」

「いいの、アダム。二人ともありがとう。気をつける」


 苦笑する私を、手当を終えたクリスがメッと叱りつける。


「そうだよミナ、もうこんなのやめてよ。ボク、心臓が止まるかと思った」

「ごめんね、クリス」


 綺麗に包帯の巻かれた指を握りしめる。私がまたミシン作業を始めそうだと思ったのか、しきりに心配しながら、クリスと双子も出ていった。


「貴女はとてもひたむきな方ですね。その健気なまでの一生懸命さこそ、貴女の魅力なのでしょう。応援したくなります」


 最後に残ったノアがぽつりと溢す。ノアに促され、私は部屋に戻った。

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