第49話
このままじゃいつになっても服は作れない。焦燥感が募るばかりの4日目を終えた深夜、私は自室のベッドを抜け出した。
執務室に忍び込み、頼りないランプの光を数台寄せ集め、ミシンの前に座る。
やってやる。夢を叶えるんだ!
「痛っ……!」
開始早々、左手の中指に激痛が走る。必死になっていたのと薄暗いのとで、ミシン針で刺してしまった。
直前に指を引いて幸い貫通はしなかったけど、爪が割れてしまった。指先も切れて、血が止まらない。
「いたたた……どうしよう」
私はパニック状態だった。その場にうずくまり、一生懸命止血を試みていると、扉がバンと開いた。
「ミナ! 無事か!?」
「レオン……!?」
ランプを片手に駆けつけたレオンは、私の指を見て顔を顰めた。
「おまえの血の匂いがするから、敵にやられたかと……命は無事で良かったが、大丈夫か。何があった」
「あ、ごめんなさい。ミシンで怪我しちゃっただけなの」
「ミシンで?」
レオンは眉をひそめる。
「ミナ、無事!? 敵襲!?」
切羽詰まった声と同時に、再び開いたドアから姿を見せたのはクリスだ。
「ミナ様、ご無事ですか!」
続いてノア。アダムとイヴまで一緒に顔を出した。
「大丈夫だ。ミシンで怪我したらしい」
レオンの一声に、皆が一様に安堵の息を吐いた。ミシンで怪我しただけなのに、深夜、パジャマ姿のみんなが駆けつける大事になって、私はあわあわと慌てる。
私のそばに寄ってきたクリスは、血の滴る私の指先を見て、私以上にあわあわした。
「ミナ大丈夫!? 痛いよね、ボクが手当てしてあげるから待ってて!」
慌てて出ていったクリスは、金属の箱を持って戻ってきた。中から包帯やらなにやら取り出して私の指を手当てしてくれる。さすがはメイドだ。
「ミナ様、なぜこんな深夜にまでミシンを?」
ノアが静かに私に尋ねた。アダムとイヴも私の返答を待っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます