足踏みミシン上等!!

第47話

クリスが夜這いしないと約束したことで、私は私室を取り戻した。改めてレオンとエルドラに行って買い物して、ようやく特攻服の制作にも取り組み始めた。


 レオンは毎日のように出かけては、私が元の世界に戻るための手ががりを探してくれている。


 召喚士達の残党を探してはチーム全ゴロシ……じゃなかった、全員をシバいて情報を集めてくれてるんだけど、やっぱり簡単にいかないみたいで……。


 過保護なレオンはノアに私のお守りを命じて、結果、執務室のノアの隣で私がミシン作業をする日々になっている。


 雑巾で練習してきたにもかかわらず、足踏みミシンはなかなか曲者で、毎日失敗ばかりだ。ゆっくり縫いたいカーブや急な曲線なども速度を調節できず、高速縫いしてしまう。


 意識して速度を落とせば止まるか逆転して、布をダメにするパターンが続いていた。頬杖をついて、私はぼやく。


「コツがわかればなあ」


 私の様子を気にしてくれたのか、ノアが何やら思案した後口を開いた。


「そのミシンを使える二人の使用人フットマンがいます。話を聞きますか?」

「いいの? お願い!」



 ◇ ◇ ◇



 ノアの手配で部屋に入ってきたのは、私が初めてこの城に来た時、出迎えてくれた双子の執事だった。ノアが緊張気味な面持ちの彼らを紹介してくれる。


「双子のアダムとイヴです。私が不在の時は執事の役割をして貰うこともありますが、基本は洋裁担当です。彼らは裏方役なので、失礼があったら申し訳ありません」

「ミナです。よろしくお願いします!」


 私が頭を下げると、双子は二人でギョッとした。同じ顔が同じように表情を変える様は見ものだった。歳も近そうだし、シンプルな短髪。美形ばかりのこの城で、抑え目な容姿の二人には親近感がわく。


 レオンやノアやクリスと比較しなければ、二人も十分整った容姿ではあるんだけど。


 様子を見ていたノアが苦笑した。


「ミナ様、彼らは使用人です。敬語は不要です」

「ノア、私は偉い人じゃないってば。二人は教えてもらう先生なんだから、ちゃんとしたいの」


 私の台詞に、二人に加えてノアまで驚いたようだった。

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