第46話

クリスはトロンとした虚な眼差しで、辿々しく喋り出す。


「ミナが、好き。ミナと、一緒にいたい。好きすぎて、辛い。ミナと、ひとつになりたい」

「はっ!?」


 最後にとんでもない爆弾発言が聞こえたのですが!


「好き。ミナが、大好き」


 クリスは可愛い顔で私をじっと見つめて、ふにゃりと微笑む。ショタに興味はなかったはずなのに、これは色々とやばい。未知の扉が開いてしまいそう。アンニュイな雰囲気を纏った笑顔は、いつもと違って落ち着かない。


「も、もういいから!!」


 思わずクリスの肩を押すと、そのままベンチから地面に崩れ落ちてしまった。


「……いたた、痛いなあ」


 地面に座り込み、クリスは瞬きを繰り返している。


「成功したんだね。何話したか覚えてないけど、ボクの気持ちわかってくれた?」


 改めて目が合えば、カァッと頬が赤らむ。男の子の格好だし、思い切り意識してしまった。


「嬉しいなあ、その反応。暗示にかかった甲斐があったよ。ボクを男として見てくれてるの?」


 クリスは私の隣に座り直すと、顔を寄せてくる。


「ねぇ、キスしていい……?」


 艶っぽい声に我に帰った。結局いつも通り、色仕掛けのオチだ。


「だっ、ダメ!!」


 全力の私に突き飛ばされ、クリスは再びベンチから落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る