第43話
その夜、ベッドに横になった私は深く考え込んでいた。
今まで漠然と、いつか元の世界に戻れると思っていた。だけどあの通り魔の目の前で、私の意識だけがこちらに召喚されたとしたら。残された私の身体は、どうなったんだろう……? もしかしてあのまま通り魔に――……
「どうした、震えているのか?」
不意に声をかけられて見れば、通りかかった入浴後のレオンだった。少し濡れた髪と、胸元がはだけたシルクのパジャマがやけに色っぽい。
今もまだレオンの部屋で過ごす日々だけど、移動式ベッドを運び入れて貰ったから就寝はそれぞれでやっている。
私の顔を覗き込み、レオンは表情を曇らせた。
「おまえ、真っ青だぞ。大丈夫か」
「私、元の世界で殺されかけた瞬間、こっちに呼ばれたの。身体ごとこっちに来たんじゃないなら、元の世界の私は……」
「…………」
レオンの大きな手のひらが伸びて、私の目の上に乗せられる。入浴後のレオンは体温が上がっているのか、温かい手が気持ちいい。
「心配するな。戻りたいなら俺が何とかしてやる。だから今は何も考えなくていい。眠れ」
レオンにそう言われただけで、少し安心した。強張った心がゆっくり溶けていくように、眠りに落ちていく。
戻りたいのかな、私は。元の世界に、元の私に戻りたい。両親に、家族に会いたい。でも戻ったら、レオンとは二度と……
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