第41話

気まずい雰囲気の中、ジークさんとの会話は途切れた。そのままレオンに促され、ジークさんの家を出る。


 帰り道、バイクの後ろでレオンの背中にしがみつきながら、私はぽつりと漏らした。


「話が難しくてよくわからなかったんだけど、つまり私の身体は、マリアさんの作り物の人形だったってこと? その中に私の心が呼び出された?」

「……そうだな」


「私の血が甘いとか、良い匂いってみんな言ったけど、作り物の身体だったからなんだね。人間じゃないんだから、人間と違って当たり前だよね。今ここにいる私は、人間じゃないんだ」


「だから何だ」

「何だ、ってそんな言い方……」

「俺も吸血鬼だ。人間じゃないが、それがどうした?」


 私はハッとした。レオンは不意にバイクを停めると、荒野に降り立つ。戸惑いながら私も続いた。


 日が傾きかけている。夕日に照らされて輝く、荒野を背景にした重厚なバイク。異世界というより外国に来た感が強い。


「レオン……?」

「おまえはマリアとは違う。喋り方が違う。表情が違う。特におまえの笑い方は、マリアと全く違った。上品なマリアの笑みとは違う、顔全体を一気に緩めたような、間抜けで、全力の笑顔」

「ちょっと、また間抜けなんて」


 レオンはフッと小さく笑った。


「まあ聞け。おまえのその顔を見た時、俺は安心したんだ。同じ顔なのに、おまえにマリアは重ならない。阿保のような喋り方をして、突拍子もない夢を語っては目を輝かせて、屈託なく笑っている。マリアじゃない、ミナであるおまえに……俺は救われた気がした」


 不意に引き寄せられ、レオンの胸に抱きしめられる。

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