『私』の正体
第39話
「マリア! 良かった、ずっと探してたんだよ」
「えっ、あの……私はマリアさんじゃないんですけど」
「何を言っているんだい? いや、それより喋れるようになったの? ついに君は、心を手に入れたの!?」
歓喜の表情で手を引かれ、家の中に連れ込まれた私は、壁に備え付けられた大きな鏡の前に立たされた。
この世界に来て初めて目にした自分の姿に、私は目を見開く。
「ほら、マリア。見てごらん。君の美しい顔だよ。思い出した?」
艶やかな黒髪は、少し癖のある私の髪と違う。鼻筋のくっきり通った綺麗な顔立ち、黒目がちの大きな瞳、長いまつ毛。
地味で素朴だったはずの私の顔じゃない。体型が近くて、髪の色が黒いから気づかなかった。
……これは、だれ?
「君はマリアだよ。僕がただ一体、唯一作り上げることに成功した、生身の人間の身体……マリアの
「え……?」
「おい、勝手にミナを連れ込むな」
レオンがジークさんを睨んだ。鏡に映るレオンも、ジークさんもそのまま。この鏡はちゃんと鏡だ。なのに私の姿だけおかしい。
ジークさんが訝しげにレオンを見遣った。
「レオン、どうして僕の人形と一緒にいたの? 彼女は少し前に、突然いなくなった。それ以来ずっと探していたんだ」
「人形……? 何を言ってる。そいつは召喚士と名乗る集団に、異界から召喚されたらしい。マリアとは別人だ」
「だけどこの身体は、僕の作ったホムンクルスに間違いないよ。ほら、ここを見て」
ジークさんが私の髪を避けて、うなじ部分を露わにした。
「マリアにあった星形の痣だよ。マリアのホムンクルスだから、同じ位置にある。これが赤の他人に、偶然に発現すると思う?」
レオンは私のうなじを確認して、眉を潜める。
「どういうことだ」
「死者蘇生法と同じ手順を踏んだのかもしれない。おそらく誘拐した僕のマリアを器として、異界の魂を召喚したんだ」
私の話をされているはずなのに、二人が何を話しているのか分からなくて、私は困惑しきっていた。
「ここにいた頃のそのマリアは、喋らないし何もできない、ただの人形だった。それが今、意思を持って喋って動いている。素晴らしいよ!」
戸惑う私に構うことなく、ジークさんは興奮気味に話を続ける。
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