第32話
「我らがようやく召喚に成功した生贄……おまえの運命は決まっている。神の為に死ぬことだ」
格好は黒装束ではないけど、この人は明らかに黒装束の仲間だ。血走った目は、あの日の通り魔と同じ。絶望的な気分で、中年男性が私に狙いをつける様子を見つめる。
「役目を果たせ、生贄。命を捧げろ!」
「助けて、レオン……!」
呟いた瞬間、私の目の前に赤いマントが舞った。続いて中年男性が、崩れ落ちるように倒れる。
「えっ……!?」
何が起こったかわからないけど、赤マントはどうやら人だ。
転がった銃を拾って振り向いたその青年は、長身の引き締まった身体に銀の長髪、すっきりと整った顔立ちに鋭い眼差しをしていた。黒いカソックのようなかっちりした服に金の腰ベルト、腰に帯びた長剣は鞘に収まっている。
中年男性を倒すのに剣を使っているようには見えなかったけど、手刀でも使ったのかな?
「大丈夫か?」
見た目通り、落ち着いた低い声だった。
「あっ、ありがとうございました、助けてくれて」
頭を下げる私を、鋭い視線がじっと見ている。私は首を傾げた。
「あの……?」
「『ミナ!』」
耳の中のクリスタルチップと、外から聞こえる声がダブって私を呼んだ。私の側にやってきて、私を庇うように立ったのはレオンだ。
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