第31話

「おまえの目的の店に行くぞ。そこの通りを曲がった所だ。ついてこい」


 私が頷いた瞬間、レオンは顔を顰めて、パンツのポケットから例の通信機器らしきものを取り出した。光ってるその様子は、どうやら着信だ。


 そのまま会話が始まったので、私はエルドラを観察することにした。


 行き交う人が多い。皆一様に生き生きした、活気に溢れた都市。日本のように道路を次々と車が行き交っているわけじゃなくて、たまに車、たまに馬車という感じだ。バイクはあまり見ないけど、珍しいのだろうか。


 と、通話を終えたらしいレオンが私の肩を叩いた。


「ミナ。悪いが店は次回だ」

「え?」

「俺の探し物の手がかりが見つかった。今から探偵の所に向かう」

「じゃあ、私はお店に」

「駄目だ。おまえも俺と一緒に来い」


 レオンは急いているようだ。だけどお店がお預けだなんて納得できない! ついていくフリをして少しずつ距離をとり、私は『そこの通りを曲がった所』へ向かう。


「うわあ、すごい!」


 思わず声が漏れた。ガラスの屋根に覆われた、美しい内装のアーケード街。降り注ぐ太陽の光で輝く、しっかりと舗装されたタイルの床に、左右対称に並ぶさまざまな店。宝石店や本屋、花屋、カフェやブティックのような店もあり、洒落た雰囲気だ。


 すっかり旅行気分で、うきうきしながら店を見て回る。私は油断していたのだ。つい先日、この都市で殺されかけたことも忘れて……。


「声を出すな。騒げば撃つ」


 不意に背後に身を寄せてきた男が、私の背中に何か硬いものを押し付けた。背中に当たっているのは、まさか銃口だろうか。


 人混みの中、男に誘導されるまま路地裏に連れ込まれる。銃を突きつけられながら振り向けば、知らない中年男性だった。

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