第30話

昼食後、私は予定通りレオンと城から出た。


「エルドラにはお店がたくさんあるの?」

「そうだな、大都市だから」


 風を切り激走するバイクの後ろから、ゴツい手袋でハンドルを握るレオンと会話する。


 耳に入れたクリスタルチップのおかげで、今回もクリアに声が聞こえた。歩いて苦労した道を、バイクで飛ばすのは気持ちがいい。


「レオンは出かける時、いつもエルドラに行ってるの?」

「いや、色々だ。俺は探し物をしていてな。あちこち飛び回って情報を集めてる」

「探し物?」

「とある書物なんだが、なかなか見つからない」

「ふーん……」


 荒野を抜け、ヨーロッパっぽい街(リドーラというらしい)を過ぎると、再び見えてくる非現実な景色。


 青空の下に広がる蒸気、たくさんのパイプと至るところで回る歯車たち、空に浮かぶ飛行船、鳴り響く蒸気機関車の汽笛。


 初めて来た時と違ってわくわくが止まらないのは、レオンが一緒にいるからだろうか。


「ねえ! あれは何?」


 道の端にバイクを停めて降りたところで、街並みの果てに見える機械装置を指差す。


「あれは巨大なスチームエンジンだ。エルドラの人々の生活を支える、主要な動力機関だな」

「へえー! すごい!」


 私がニコニコすると、レオンは優しい目をして微笑んだ。その眼差しにまた戸惑う。いつも怖い顔して怒ってるのに、私が笑うたび態度が変わる。どうしたって言うんだろう。

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