第25話

朝食を終えた私は、お世話お世話と追いかけてくるクリスを必死に撒いていた。


「ミナさま、お食事の間ずっと気になっていたのですが、やっぱり服が乱れておいでです! 私が脱がせて、綺麗に着せ直して差し上げますわ!!」

「い、いらない! ちゃんと着れてるってば!」


 鬼ごっこのように逃げ回り、慌てて手近な部屋に入り込む。扉の向こうから「ミナさま〜!」とクリスの声がして、慌てて部屋の奥に進み、大きなベッドの影に隠れた。


「撒けたかな、今度こそ……もう何時間やってるの、クリスしつこすぎ。疲れたよ……」


 そう呟いたところで、突然誰かにベッドの中に引き込まれる。


「きゃっ!」


 布団の中、驚く私を抱き寄せたのはレオンだ。気づいてなかったけど、よく見たらここ、レオンの部屋だ……!


 レオンは仮眠でも取っていたのか、私を薄く開いた目で見た。朝食の時着てたベストは脱いでいて、シャツの胸元もはだけている。


「なんだ……おまえか」


 眠たそうなレオンは驚く様子もなく、当然のことのように呟いた。気怠い寝起きの顔がやけに色っぽいし、顔立ち整い過ぎだし、この状況で至近距離とか無理なんだけど!


「レ、レオン、離して……!」

「行くな」


 寝起き特有の掠れた声で呟いて、ベッドから出ようとする私を引き戻す。


「おまえの居場所は俺の隣ここだろう?」

「はぇっ!?」


 ぎゅっと抱きしめられて、思わず変な声を出してしまった。どうもレオンは半分寝てる。というか完全に寝ぼけてる。


「愛してる……」

「はっ!?」


 あ、愛してる!? 耳元で囁かれた甘い声、美しすぎる顔、逞しい腕。だめ、心臓が爆発しそう!!


「好きだ……マリア」

「マリア……?」


 私が困惑して聞き返した時、不意に部屋の扉がバンと開かれた。ベッドサイドに走り寄ってきたのはクリスだ。


「ミナ! こんなところに隠れてたの!? 寝込みを襲うならボクにしてよ!」


 クリスの怒ったような大きな声に、レオンの目がぱっちりと開いた。

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