第23話
私は驚きのあまり絶句した。可愛らしい小鳥のような声とは一転、完全に少年の声だった。
「改めて自己紹介させてもらうね。ボクはクリスティ・アスター。レオンの弟だよ」
「あなた、本当に男の子……なの?」
「うん」
とても信じられない。女の私よりずっと可愛いのに!? 驚きのあまり言葉を失った私の顔を、天使のような可愛い顔が覗き込む。
「スパイの類の処理は全て、ボクが担当してるんだ。男であれば、メイドの少女に簡単に騙されてくれるし、女性であっても、同性のメイドだと警戒心を持たれにくい。油断した獲物に近づいて、全てを吐かせるのがボクの役目だよ。まあ、この格好は趣味でもあるんだけどね」
「獲物……? 全てを吐かせる?」
困惑する私の両肩に手を置くと、クリスは言い聞かせるように言葉を続ける。
「さあ、ボクの目をよーく見て。ミナ、全てを話してくれるね?」
その瞬間、私の意識はぷっつりと途切れた。
◇ ◇ ◇
深い眠りから醒めていく。瞼の向こうが明るい。朝、だ。
「おはようございます、ミナさま。ゆっくり眠れましたか?」
小鳥のさえずりのような可憐な声に目を開くと、メイド服のクリスと、自分が着ているヒラヒラでフリフリのネグリジェが目に入る。いつかの朝と同じだ。
「え? あれ?」
夢だったの? どこからどこまでが? ぼんやりと目を擦る。
「昨日のこと、覚えてる?」
唐突に飛んできた少年の声に、一気に目が覚めた。慌ててベッドから身を起こしまじまじと見つめれば、天使のような微笑みを返される。
「良かった、ちゃんと覚えてるね。君の記憶は、あえて消さなかったんだ。敵ではないのはわかったし、ボクは君が気に入ったから」
クリスが一度瞬きした瞬間、その大きな瞳は赤く染まっていた。
「ボクの目、赤いよね。この赤い色は欲情の証なんだよ。吸血鬼が血を欲しがるのは、欲情と同義なんだ」
ベッドを軋ませて、クリスはぴったりと私の隣に座る。
「飲ませてよ、君の甘い血を。ボクといいことしよう……?」
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