第22話

「ミナさま! 駄目ですよ、お悪戯イタしちゃ」


 連れて行かれた私室にいたクリスは、私をベッドに座らせて、メッと叱りつけた。可愛いから全く怖くない。


「ごめんね、クリス」


 騙して出て行った手前気まずい。それにしても広い部屋だけど、このお城ではメイド一人一人に私室があるんだろうか?


「突然いなくなるから心配しました。私も怒られてしまいましたわ。貴女が出て行くのを見過ごしたんですもの。おかげさまで今日は部屋に謹慎です」

「ごめんね……私、軽い気持ちで。こんなに迷惑かけると思わなくて」


 ノアの痛々しい姿を思い出した私は俯く。外に出てみてわかったけど、私は無力だった。お金もない、交通手段もない、右も左もわからない。おまけにまた黒装束に襲われた。


 項垂れる私の頭を、クリスの綺麗な指がそっと撫でる。


「ミナさま、反省しているのですか?」

「それは、もちろん」

「では、罰として……飲ませていただけませんか?」

「? 何を?」

「貴女の血を」

「……は?」


 私は耳を疑った。言っている意味がよくわからない。


「あの、クリスも吸血鬼なんだよね」

「はい、そうですわ」

「レオンに、吸血鬼は異性の血を欲しがるって聞いたんだけど、同性の血も飲むの?」

「いいえ、私たち吸血鬼は、同性の血を受け付けません」

「え? じゃあどういうこと?」


 理解が追いつかず、私は首を捻る。クリスはクスッと笑った。


「私、貴女が欲しいですわ。だって……」


 言葉を切ったクリスは、ぎしりとベッドを軋ませて私の隣に座ると、やけに近い距離で私に囁く。


「ボクは男の子ですから」

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