第21話

「ミナ、おまえはどこへ行こうとしていた?」

「エルドラに」

「何の用があった」

「買い物がしたくて……」

「買い物だと? 金も持たないおまえが? エルドラまで歩いて何時間かかると思ってる」

「う、それは……」

「突然おまえが襲われているのが見えて、寿命が縮まった。もう、あんなのはやめてくれ。おまえがもし、殺されでもしたら、俺は……」


 レオンは苦しそうに言葉を詰まらせて、顔を歪める。出会ったばかりの私のことに対して、どうしてそんな顔をするんだろう……?


 私にまじまじ見つめられて、レオンはハッとしたようだった。


「まあいい。正直に話せ、エルドラに何の目的があった。おまえはスパイなのか?」

「違うよ、スパイなんて」

「では目的はなんだ。何をしようとしていた? 隠せば隠すほど軟禁状態が続くぞ」


 目的は特攻服を作ることです、と言っても通じるわけない。黙り込む私に、レオンはため息をついた。


「俺とノアとクリスティ、この三人が特に戦闘力に長けている。三人のうち誰かを選べ」

「選ぶって……何の話?」

「選ばせてやると言ってる。勝手な真似をしたおまえを、一人にはできない。今後、夜間も三人のうち誰かと過ごして貰う。おまえの自室も無しにする。おまえが秘密を吐くまで、誰かの部屋で一日中監視だ」

「えっ……!」

「文句があるなら地下牢に入れてもいいんだぞ」


 そんなのあんまりだ。人権無視だ。そう言いたかったけど、レオンの迫力を前に何も言えない。


「じゃあ、クリスと」


 男二人と女一人を挙げられて、一夜を過ごせと言われたら答えは決まっている。当然の選択をした私に、レオンは頷いた。

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