第11話
「
ごくりと唾を飲み込む。
「生身の人間では到底敵わない身体能力、戦闘力を持つ種族だ。異性の血を求め、異性の血の匂いにのみ惹かれるのが、俺たちの本能……。普通なら、恋人か伴侶の血が少々欲しくなる程度なんだがな。どうやらおまえは特別らしい」
「へっ?」
「おまえに会った瞬間から、独特の血の匂いに惑わされそうだった。恐らくノアも同じだろう。あいつも吸血鬼だからな。ま、この城にいる者は全員吸血鬼だが」
「それって、
「ああ、そうだな」
通り魔、黒装束に続く三度目の恐怖に、私の身体は震えだした。
「私の血を吸って、殺すんですか……?」
「殺さない」
レオンさんは私を宥めるように髪を撫でる。なんて綺麗な顔なんだろう。作りものみたいで怖いのに、目が離せない……。
「そう怯えるな、血は嗜好品だ。致死量を吸って殺すようなことはしない。だが吸血行為は、身体の交わりと同時に行われる」
「身体の……?」
呟いた瞬間その言葉の意味を悟り、私の頬はカッと熱くなった。レオンさんは、黒装束の歯車で飾られた私の耳元に、形の良い唇を寄せる。
「ミナ、おまえの血の匂いは、吸血鬼の男を惹きつける。本当はどこから来たのか、目的は何なのか……続きはこのベッドで訊いてやる。おまえの身体にな」
レオンさんは私の首筋を優しく舐め上げた。注射をする前に、アルコール綿で何度も拭かれる時みたいだ。何度も何度も、繰り返し与えられる心地良い感触。
迫り来る未知に、心臓が早鐘を打つ。私の鼓動を拾うように、大きな手のひらが私の胸元に触れた。
「や、やだ! やめてレオンさん」
「レオンでいい。……呼んでくれ、その顔で……その声で。おまえがそばにいてくれるなら、他には何もいらない」
「え……?」
切ない呟きに滲む、私を愛おしむような響きに心がざわめいた。まるで恋人を見つめるような、甘い眼差し。
レオンさんの目は、私を好きだと言ってる。そんなわけないのに、なぜかそう錯覚してしまう。
どうしてそんな目で私を見るんだろう。戸惑う私の胸は不覚にもキュンとしてしまい、ドキドキして、動けなくなってしまった。
再び首筋に唇が落ちる。牙が首筋に僅かに刺さったのか、血が一筋流れ出る感覚。全然、痛くない。むしろとても気持ちが良くて、このまま……流されてしまいそうに……。
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