第4話

「命尽きらんとする貴様を召喚した我等は、魂の救世主……」

「!!」


 耳に入ってきた、理解できる言葉にハッとする。


「救われたくば、その命を捧げなさい!」


 先程私に剣を振り下ろした、声から察するに男である黒装束がそう言って、訝しむ私に再び剣を振りかざした。


「異界人の魂を、我等の神へ!」

「きゃああああ!!」


 殺される!

 私は半狂乱でベッドから飛び降り、重たい扉を必死に押し開けて部屋から走り出た。カーペットのひかれた長い廊下を一心不乱に走る。壁に飾られた絵画達が、全速力で過ぎていく私を静かに眺めていた。


「あった、あれが出口だ……!」


 階段を降りて、玄関ホールに出た私は、両開きの扉を押し開けて外に飛び出る。


「待て、生贄!」


 黒装束達が追って来る。芝生の地面を死ぬ気で走り、私は森に入った。木立の間をくぐり抜け、躓きながらも必死に逃げる。黒装束達はおかしなマスクのせいで視界が悪いのか、追いつけないようだ。


「よかった、このペースなら逃げられるかも……」


 呟きながら必死に森を進む。小さな森だったようで、やがて開けた場所に出た――瞬間、私はありえない景色に呆然と目を見開いた。

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