第3話

「う……」


 自分のうめき声で、私は覚醒した。ガンガンと頭が痛い。私、家に帰って寝てたんだっけ?


 嫌な夢を見た。通り魔に殺されかけて、急に目が眩んで……。


 瞼をゆっくりと開く。不気味な薄暗さの中、まず最初に目に入ったのは、凝った模様の天井から吊るされた、ロウソクのシャンデリア。まるでどこかの古い洋館みたいだ。


 さっきから念仏のような、ぶつぶつ呟く複数の声がうるさい。これは夢の続き……?


 ぼんやりと思考を巡らせていると、不意に目の前に人影が現れ、私に向かって剣を突き立てた。


「ひえっ!?」


 すんでのところで身をかわせば、剣は私の腕をかすり、寝かされていたベッドに深々と突き刺さる。破れた服の下、浅くできた傷から血が流れた。


 ズキズキと痛む腕の傷。夢じゃない、リアルな痛み。驚愕した私は、慌てて起き上がる。


 金属でできたガスマスクのようなお面で顔全体を覆い、フード付きの黒装束で身を包んだ集団が、簡易ベッドの上の私を取り囲んでいた。


 室内の様子はやっぱり洋館だ。アンティーク調の家具に本格的な暖炉と洒落たマントルピース、フランス窓にかかった赤いカーテン。


 こんな場所、さっぱり見覚えはないし訳がわからない。私は黒装束の一人に恐る恐る問いかけた。


「ここはどこですか? あなた達はなんですか?」

「×◯◻︎×、◯×◇×……」


 何かを話しかけられたけど言葉がわからない。違う言葉を数回交わしたところで、金と銀の歯車の集合体のような耳飾りを耳にかけられた。カチリ、と音が響き、耳飾りが私の耳から耳の後ろにわたり、ぴったりとくっつく。


「な、なにこれ」


 慌てて外そうとするけど取れない。耳と一体化してしまったようだ。

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