異世界で発見、私の番長!

第2話

知らなかった。人生の終わりが、こんなにも唐突にやってくるものだなんて。


 私、松尾美波まつおみなには、絶対に叶えたい夢がある。


 幼い頃、映画『夜露死苦・タイマン愛羅武勇』を観て以来、ヤンキーや不良少年――それも一世代前の――に強烈な憧れを抱いて生きてきた。


 そんな私の夢は、私が番長と認めた男の人に、私が作った特攻服を着てもらうこと。本物の番長かどうかは関係ない、私がそう思える人だってことが重要だ。


 私の特攻服着て、喧嘩上等! なんて叫んでもらえたら、冗談抜きに鼻血吹いて死ねると思う。夢を叶えるため、高校は服飾デザイン科に進んだ。


 だけどまだ、私の夢は叶ってない! 夢を叶えることだけを目標に生きてきた人生の結末が、こんなにあっけないものだなんてあんまりだ。


 それは休日の、買い物の帰り道での出来事だった。友達と別れて、歩道を歩いていた時だ。


 おかしな男がうろついていると思った。目的もなくそわそわと歩き回る、不審者そのものの動き。その男と目が合ってしまった瞬間、命の危険を感じた。


 血走った目で何かを叫びながら、刃物を取り出した男が私に向かって来る。その光景がまるでスローモーションのように映った。


 強い殺意に身体がすくみ上がる。男が突き出した刃物が、正に私の心臓に突き刺さろうかという、その瞬間だった。


 ――さあ、生贄よ。我等の元へ……!


 頭の中に強く響いた、知らない声。目の前の刃物男、景色、全ての映像がぐにゃりと歪み、強烈な目眩が襲う。私はそのまま、意識を手放した。

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