第2話
そうして山菜取りが終わり帰路に着き子供たちは各々の家に、
マイク間借りしている村長の家に着いたのであった。
マイクとレナおばさんは影響力はあるとはいえ使用人のような立場、村長たちとは同じ食卓につくことは許されていなかった。
ただ、食糧庫は同じマーヤおばさんはさっとマイクの摘んだ山菜を物色すると全て食糧庫に移すように命じ、自分は母屋の一回に向かった。
村長宅では階上が村長家族が住む部屋、階下が使用人が住む部屋と住み分けされ階下の者は限られたものしか階上に行くことが許されず、階上の者が階下に行くことは通常無かった。
レナおばさんの月給であれば他に家を借りる事もできたが倹約のためと使用人の部屋に住まわせてもらっていた。
料理をつくるのはレナおばさんの担当でレナおばんさんはこの日山菜を器用に扱いパイを作った。
この辺りではもともと山菜を食べる文化はなかったが、レナおばさんが広めたのである。
レナおばさんは各国を旅したことがあるようで色々な国の知識に詳しかった。
レナおばさんに興味本位で歳を訪ねると
「レディーに歳を聞くのはマナー違反なのよ」
とお茶を濁らせるのがお決まりであった。
「フキをとってきたので、フキは今は旬ではないけれど、まぁいいわ」
※西洋フキのため
サクサクの甘酸っぱいフキを挟んださくさくのパイを焼き、シチューを煮込む。
それが階上も階下でも振舞われた。
「村長と同じものが食べられるなんて、レナさんには頭が上がらないよ。」
庭師の二コラがパイをおいしそうに頬張りながら言う。
二コラは14歳の頃から20年間この村長宅で住み込みで働いているため、レナおばさんが働き始める前の待遇を知っていた。
「たしかに、レナさんが来てからぐっと良くなりましたね。」
執事のモールソンもその言葉に続く。
実際にレナートは使用人の中でも別格の扱いであるが階下でご飯を食べる際に自分とマイクだけが良い物を食べるのは気が引けると言い、使用人の食事の底上げの交渉を行っていた。
ただ、それだけだとどうしても食費がかかりすぎてしまうという事で山菜を食べる事を提案し今の食事体系となった経緯がある。
山菜を食べるようになったことでこの村は他の村よりも余裕のある暮らしをすることができるようになった。
また、その事もレナートの影響力をあげたのである。
マイクはまだ成人前の子供という事もあり、仕事は山菜取り以外は任されていないためレナートと一緒に食事をとっているが、使用人は交代で休憩をとっていた。
そのため、いつも一緒に食事をとり仲良くなる使用人もいるが、ほとんど関わり合いのない使用人もいるという状態になっていた。
中でも二コラとモールソンはレナートおばさんにもマイクにも優しく接してくれていて、モールソンさんは字を、二コラはレナートが忙しい時の話し相手になってくれたり植物の事について教えてくれていた。
マイクは二人が大好きであったが年頃のせいもあって素直にそれを表現できないでいた。
そして、二人もマイクの微妙な年頃を察して辛抱強く接してくれていた。
レナおばさんは忙しい事もあって中々時間が取れないが食事は必ず一緒に取ってくれるのでゆっくり話すにはこの時間が最適だ。
「レナおばさん、頼まれていた薬草とってきたよ」
マイクはそう言って薬草を渡す。
「まぁ、ありがとう。それじゃぁ今日もテストを始めるわよ。」
そういって一つずつ取り出した薬草の名前と効能を一回一回確認するのが山菜取り後の恒例であった。
レナおばさんは薬草を1つずつ手に取りマイクにみせる。
「…ヨモギ…、…フェンネル……」
光が見えるため覚えなくてもよいと思っていたマイクであったが、毎回毎回されると嫌でも覚えてしまう。
ただ細かい効能までは覚えられないのであった。
「種類の見分けはだいたいできているわね。似た形で毒があるものには気を付けるのよ。効能も覚えられると良いのだけれど……次からは効能もテストしていくわよ。しっかり覚えるのよ。」
「でもおばさん!毒かどうかは……」
「覚えるのよ!私たちがここでいい待遇を得られるのはこういう事をきちんと理解しているからなのよ!」
そういって無理やり話しを切り上げるとレナおばさんはそそくさと次の休憩をとる人の食事を用意する仕事に戻っていった。
マイクはそれを理不尽に感じ悔しさを心に押し込めていた。
気まずい沈黙の中、一緒に食事をとっていた仲間が食事を取り終え次々と流しに食器を積み上げる。
皿洗いはマイクの仕事のため食事を取り終えたマイクは流しに食器をもっていくと同時に皿を洗い始めた。
流しとキッチンは直結しているため、この時もレナおばさんと話す時間だ。
忙しいレナおばさんはこのタイミングも逃さない。
薬草の名前を言って、効能も教える。
マイクはそれを復唱する。
レナおばさん式詰め込み教育だ。
マイクは本当は他の事を話したかった。
マーヤおばさんから変な視線を感じること等。
それがすべて薬草の勉強に使われるのが嫌なのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます