マイク・デルフィン~幻想の守護者~

@okurahoma

第1話 農場での生活

さて、天高く日がさんさんと輝く真夏のある日、マイク・デルフィンは村の友達と山に山菜を取りに行っていた。


マイクは今年13歳を迎えばかりの男の子。


おもいっきり遊びたい気持ちともう少しで大人になるのでしっかりしなければならないという気持ちに揺れ動く思春期真っ盛りな健全健康な男子である。


輝くような金髪で邪魔にならない程度に髪が伸びている。


そんなマイクと子供たちがいる山は村の管轄にあり比較的安全だとされていたため子供だけでも複数人であれば採取に向かえる場所であったが、この日は村の大人の女性であるマーヤおばさんも一緒であった。


子供たちは手慣れた手つきで食べられる山菜を刈り、籠に入れていく。


マイクも同じように山菜を籠に入れていた。




「日差しが強いわぁ」


マーヤおばさんがそう言い、額に手を当て日の光を薄目で眺める。




マーヤおばさんはおばさんと言っても妙齢の女性で妙に性を意識させる部分があった。


彼女は隣村からマイクの住むタタリコ村の村長の息子に2人目の嫁として嫁いできた女性で、息子といっても30を超えている村長の息子・タナシとは少し年齢が離れていて、2人目の妻として迎えるにはもったいないくらいの美人と言われていた。


タナシの一人目の妻は一人目の子、タムタンを出産した時に死んだといわれていた。


タナシはこの2人目の腰まで届く金髪のスッキリとした切れ長目の美人の妻をたいそう気に入っていて、いつも周りに自慢しているのであった。




子供たちがせっせと山菜を籠に入れている中でマーヤおばさんは自慢の金髪の髪を梳かす。


それを尻目にマイクは山菜のほかにも何種類かの草を籠とは別の袋に詰め込んだ。


その草はマイクの育ての親であるレナおばさんのお使いであった。




レナおばさんはレナートという名の育ての親で、両親が無くなってからずっとマイクの面倒を見ている。


レナおばさんはマーヤおばさんに負けず劣らずの美人でストレートの黒髪が特徴で薬を作ることを得意としていた。


マイクは薬となる薬草を集めているのだがそれがどのような薬草であるかは元々は知らなかった。


初めはそれが薬草かどうかも形だけでは判断できなかったのだが、1年ほど前から草が発光している事に気づきその草を薬草に詳しいレナおばさんに見せたのだ。




レナおばさんは一瞬ハっとした顔をすると、


「これはたしかに薬草よ、でも光が見える事は誰にも言ってはならないわ。他の人には見えないので頭がおかしくなったと思われわよ」


と固く人に話すことを禁じた。




それからレナおばさんはマイクに薬草の知識を教え始めたが、マイクはどこ吹く風。


マイクには自分が薬師になる未来など想像できなかったのである。


マイクは自分には薬草が光を放っているように見える、その事が自分に特別な能力があるという事を気付かせ自分には何かあるのだと思いその事で薬師という平凡な未来になることはないと思っていたのであった。


その事がレナおばさんの最近の悩みの一つであった。




夕方頃になるまでその作業は続いた。


背中に背負った籠がいっぱいになる頃


「そろそろ帰るわよ」


マーヤおばさんが集合の声をかける。




その声で子供たちがわらわらと集まり


「まーやさん見て見て!こんなにりっぱなフキが取れたんだよ!」


等と子供がまーやに山菜を見せる。


それにたいしてまーやおばさんは


「まぁ本当ね、私は全然採れなくて」


等と返すと子供たちがとった山菜の一部をまーやおばさんに渡し始めた。


子供たちにも美人なマーヤおばさんに気に入られたいという子供もいれば、村の権力者のお気に入りの妻に気に入られれば何か見返りがあるかもしれないというような打算がある。


マーヤおばさんはマーヤさんおばさんで初めからこれを期待しているのであった。




「マイク、あなたの調子はどうかしら?」


口角を上げ目じりも下がっているが瞳の奥は笑っていない顔つきでマーヤおばさんがマイクに尋ねる。




「はい、僕も順調ですよ。これをどうぞマーヤさん」


そう言って見栄えのする山菜をマーヤに渡す。




マイクの育ての親であるレナおばさんは村に一人しかいない薬師のため村長に次ぐ影響力を持つため媚びる必要はないのだが、レナおばさんとマイクはマイクの両親が死んでから転がるような形でこの村に来て、村長の特別な許可の下村長の家に滞在しているため、余計な角が立たないようにとレナおばさんが身に着けさせた処世術だ。


この村の村長は男爵位をもっており、身寄りのない人や訳アリの人の雇用を行って農場を経営したりと慈善家のような活動を行っていた。




「立派なフ・キ・ね」


そういってマーヤはねっとりとマイクを見る。




いつ頃からだろうか、マーヤおばさんはマイクをこのような視線でみるのであった。

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