第1話

桜井辰彦は、春の陽射しが差し込む教室で、友人たちと過ごす時間が何よりの楽しみだった。高校3年生となった彼は、進路や未来について不安を抱えつつも、仲間たちとの絆を深めることで心を支えていた。しかし、その笑顔の裏には、誰にも打ち明けられない秘密が隠されていた。


「辰彦、明日、みんなで遊びに行かない?」田村和美が明るい声で話しかけてきた。彼女の笑顔は、辰彦にとって心の拠り所だったが、その裏には消せない思いがあった。和美は彼に対して特別な感情を抱いていることに、彼は気づいていた。しかし、自分の心の奥に秘めた真実を打ち明けることはできず、ただ微笑んで答えるしかなかった。「うん、行こう。」


その瞬間、教室のドアが開き、石井俊介が入ってきた。彼はいつも冷静で、周囲の雰囲気を敏感に察知する能力を持っていた。その鋭い目は、辰彦の心の動揺を見抜いているかのようだった。「明美も来るだろうし、楽しみだな。」俊介の言葉に、辰彦は少しだけ安心した。明美はクラスの中心的存在で、彼女の明るい性格がみんなを引きつけていたが、辰彦はその微笑みの裏に潜む影を感じていた。


その日の放課後、仲間たちが公園に集まった。バドミントンを楽しみながら、彼らは無邪気に笑い合っていた。しかし、辰彦は心の中で不安が渦巻いていた。最近、彼の周りには冷たい空気が漂い始めていたからだ。山田涼の様子がどこかおかしい。彼はいつも明るく振る舞っていたが、最近はその笑顔の裏に深い影を抱えているように見えた。


辰彦は心配になり、涼の肩を叩いた。「大丈夫か?」と問いかけると、涼は驚いたように辰彦を見つめ、すぐに笑顔を浮かべた。「もちろん!何も心配してないよ。」その言葉に、辰彦は安堵したが、心の奥では何かが引っかかっていた。彼は、涼が本当に何も抱えていないのか、確信が持てなかった。


その日、彼らが遊んでいる最中、突然、空が暗くなり、冷たい風が吹き抜けた。辰彦は不安な気持ちを感じながらも、仲間たちと一緒にいることでその不安を紛らわせようとした。しかし、悪魔の存在が彼らの運命を変えることになるとは、この時点では誰も予想していなかった。


夕方、辰彦は帰り道を一人歩いていた。心の中にモヤモヤとしたものが残り、どうしても解決できない思いが渦巻いていた。彼は、仲間たちとの友情を大切に思っていたが、自分の心の中に隠された秘密がその絆を脅かすのではないかと恐れていた。悪魔に試されることになるとは、夢にも思っていなかった。


その夜、辰彦は夢を見た。暗闇が広がり、冷たい空気が肌に突き刺さる。彼は一人、途方に暮れていた。すると、目の前に異形の存在が現れた。悪魔だった。身の丈を超えるほどの巨躯を持ち、黒い影が彼の周りを渦巻く。目は赤く光り、深い闇を宿している。その冷たい笑みは、心の奥に潜む恐怖を掻き立てた。


「桜井辰彦よ、君の心の奥底に秘められた真実がある。」悪魔の声は重く、低音で響き渡った。辰彦は恐れおののき、体が動かない。悪魔は言葉を続ける。「君の周りには嘘が渦巻いている。もし、その嘘を暴露しなければ、君とその仲間たちの命は奪われる。しかし、全ての真実が明らかになった時、悪魔を呼び出した者が死ぬのだ。」


辰彦はその言葉に凍りついた。心臓が高鳴り、恐怖が体を支配する。悪魔の存在は、彼にとって圧倒的な力を持っていた。彼はどうすればこの恐怖から逃れられるのか、全く分からなかった。悪魔はさらに近づき、その冷たい手を差し伸べてきた。辰彦は背筋が凍り、思わず目を閉じた。


「君は選ばれた者だ。真実を明かすことで、運命を変えるか、それとも隠すことで全てを失うか。」悪魔の声が、彼の心の中で響いていた。辰彦はその言葉を受け止めることができず、ただ震えていた。


「運命の選択が迫る。君が選ぶのは、友情か、裏切りか。」悪魔の声はさらに深く、重く響いた。辰彦はその瞬間、自分の心の奥にある秘密が仲間たちを傷つける可能性を考えた。果たして、彼は何を選び、どのように行動するべきなのか。悪魔の冷たい笑みが、彼の心に恐怖を植え付けた。


辰彦は目を覚ました。冷や汗が全身を覆い、心臓が激しく鼓動していた。夢の中の悪魔の言葉が、まるで現実のように彼の心に残っていた。彼は自分の秘密が仲間たちを脅かすことを恐れ、どうすれば良いのか分からなくなっていた。しかし、悪魔の言葉が彼を突き動かしていた。運命を変えるためには、何か行動を起こさなければならない。


次の日、学校での雰囲気はいつもと変わらなかったが、辰彦の心には重い影がつきまとっていた。彼は仲間たちと過ごす時間が少しずつ苦痛に変わっていくのを感じていた。彼らは互いに信じ合っているつもりだったが、心の奥にはそれぞれの秘密が隠されていることに気づき始めていた。


放課後、辰彦は一人で考え込んでいた。悪魔の言葉が脳裏を離れず、どうすればこの状況を乗り越えられるのか悩んでいた。彼は、仲間たちと本当の友情を築きたいと思っていたが、そのためには真実を明かさなければならない。だが、自分の秘密を暴露することはできなかった。


果たして、仲間たちとの絆は試練を乗り越えることができるのか。辰彦は新たな決意を胸に、仲間たちとの対話を続けることを決めた。悪魔の言葉が彼を縛りつける中、彼は一歩を踏み出す準備をしていた。

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Singes:悪魔に試される青春の絆 おおやけ @ooyake

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