第88話
「……もしもし?」
『乃亜。今ちょっと話せるか?』
「いいけど……何か用事?」
『この間おまえと会ってから、連絡しようか迷ってた。おまえ、すげー綺麗になってて。もう一度やり直したい』
「えっ……」
『会って話せないか』
「そんな……今更そんなこと言われても、私……」
『少しだけでいいから。少し話すだけ』
「ごめん。無理だから」
健はまだ何か言っていたが、乃亜は一方的に電話を切った。突然の展開に頭が追いつかない。理央は溶けかけた食べ残しのアイスを食べながら、そっけない声で聞いてくる。
「電話、元彼?」
「うん……」
「なんて?」
「ううん、何でもない。大した話じゃないの」
乃亜は作り笑いを向けたが、理央は笑い返してはくれなかった。
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