停滞期……?

第86話

ダイエットに励む日々の中、いつも通りに乗った体重計の上で、乃亜は眉を寄せていた。


「どうしてなの……全然減らない」


 これまで順調に進んできた乃亜のダイエットだったが、ここに来て躓いている。同じことをやっていても、体重が全く減らなくなっているのだ。


(お腹が空くと胃がむかむかして、食べちゃうんだよね。無理しても痩せる予定だったのに、このままじゃ……)


 計画通りに進まないのに時間だけが過ぎていき、乃亜は焦っていた。


「いわゆる停滞期ってやつなのかも。なんとかしなきゃ。もっと頑張らなきゃ」


 休むことなく続けていると、やがて理央が帰ってきた。


「ただいま。まだ運動やってたの? 俺が出る時からやってたじゃない」

「違うの、お昼にちゃんと休憩してるよ」


(……してないけど)


 永遠に痩せないデブ体質だと思われたくなくて、理央には体重が減らなくなったことも隠している。


「そっか。じゃあ、頑張ってる乃亜ちゃんに、お土産」


 差し出された紙袋にハッとする。


「これって! 行列が絶えないアイクリーム屋さんのロゴ!!」

「……君って地元の人よりこの街に詳しいよね」

「下調べは入念にするタイプなの。でも、寒いのにアイス?」

「もちろん、わざとだよ」


 悪戯っぽく言って上着を脱ぎ捨てると、理央はソファに座って両手を広げた。


「はい、おいで」

「なに? どうしたの?」

「食べてる間、寒くないように抱っこしててあげる」

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