第75話
それに帰りたくはない。理央の側を離れたくなかった。
「私、もう少しここにいさせてもらってもいい? 迷惑はかけないから」
「……わかった」
理央が渋々了承したので、乃亜はホッと胸を撫で下ろす。
(理央くんが好きな細身にはなれてないし、迷惑がられて当然だよね。もう時間ないし、食事抜いても頑張らなきゃ)
乃亜はついに、過度なダイエットに手を出す決意を固める。極端な食事制限に手を出さないと間に合わない。
しかしその計画は、決めた直後に断念させられることになる。ハンバーガーを食べなかった乃亜のため、理央が改めて夕食を作ったのだ。
料理の並んだダイニングテーブルに座っても、一向に食べる気配を見せない乃亜。理央は乃亜の前にお茶のグラスを置きながら、厳しい顔で乃亜を見た。
「せっかく作ったのに、なんで食べないの? それはジャンクフードじゃないよ」
「…………」
乃亜の手は膝の上から動かない。
「無理なダイエットは駄目だって言ったよね? 体を壊してリバウンド。より痩せにくい、ぼろぼろの体の出来上がりだよ」
淡々と説教する理央に、むっつりと顔をしかめて黙り込む乃亜。まるで親に叱られている子供だが、残された時間が少なく必死な乃亜は、手段を選んでいられない。
理央の作ってくれた夕食は、ダイエットメニューではなくなっていた。カラッと揚げた美味しそうな唐揚げにコーンスープ。乃亜の好物で揃えた、比較的高カロリーのメニュー。久しぶりに見る好物なのに、それが逆に乃亜の食欲を削ぎ落とした。
「乃亜ちゃん、食べて」
「…………」
理央が説得するも、乃亜の意志は固い。
理央は苛立った様子で乃亜の正面に座り、またもビールを開けた。それを一気に煽ると、疲れたようにため息をつく。
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