第72話
「健ちゃん……!?」
「やっぱり乃亜か。久しぶり」
すっくと立ち上がった乃亜を、健は驚いた様子で見ている。
「可愛くなったな。痩せたのか?」
「うん。ダイエット中なの」
「そうか。もしかしてオレのため?」
「そうだよ。おまえを見返すためにね」
不意に会話に割って入って来たのは、乃亜の背後の理央だ。飲み物を持っていないが、買わずに戻ってきたのだろうか。健は唖然とした様子で、自分よりも頭ひとつ分は背の高い理央を見上げている。
「はじめまして。乃亜ちゃんの婚約者の、如月理央です。もう会うことはないだろうけど、よろしく。じゃあ、またね」
言うが早いか、健を置き去りにして、乃亜の手を引いて歩き出す理央。強めな力で握られた手は痛いくらいだ。歩調も早い。
手を引っ張られるままに、早歩きで必死についていきながら、乃亜は理央の背中に声をかける。
「理央くん、帰るの? まだウォーキングが」
「君は痩せたし、彼を見返すことができた。ダイエットは終わり。もう十分でしょ」
「何言ってるの、全然十分じゃないよ」
「十分だよ。少しぽっちゃりはしてるかもしれないけど、気にするほどじゃないでしょ?」
「そんなことない、私のダイエットはまだ終わってないよ」
ぴたりと足を止めて、理央は乃亜を振り返った。怖いくらいの真顔だ。
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