第70話

乃亜は玄関で彼を出迎える。


「おかえりなさい!」

「! ただいま……」


 帰ってきた理央は、乃亜を凝視した。胸元が大きく開いたトップスは、ウエスト周りをカバーするぺプラムデザイン。スカートは膝上丈だ。元より顔立ちは悪くないので、しっかりと施した化粧は、思っていた以上に映えた。


「どうしたの、その格好。化粧も……珍しいね」

「まだ太めだけど、結構痩せたでしょ? だから、おしゃれしてみたいと思って」


 乃亜はにっこりと笑う。靴を脱いだ理央は、乃亜の腕を掴んで顔を寄せてきた。


「似合ってる。可愛い」


 唇に落ちてくる軽いキス。ドキドキと胸を高鳴らせながら、乃亜はキスの続きを期待した。しかし期待に反して、理央は乃亜からあっさりと離れていく。


「着替えてくるよ。君も出かける準備して。今日は寒いから、上着をしっかり着てね」


 爽やかな微笑みに一瞬ショックを受けた乃亜だが、すぐに気を取り直した。


(まだまだ。本番は夜だよね!)

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