第52話

「残念。俺、くすぐられても効かないんだよね。……まあ少しはくすぐったいから、我慢はしてたけど」

「ま、まさかまた、仕返しするつもり?」

「当たり前。やられっぱなしじゃ格好つかないでしょ」


 乃亜の両手を片手で一纏めにして、頭の上で固定した理央は、乃亜の下半身に跨り動きを封じて、寝巻きの上から乃亜のお腹をさわさわと撫で始めた。


「な、へんな触り方しないでよ……っ!」

「さっき、君も似たようなことしてたじゃない。手のひらで俺の身体ペタペタ触ってさ」


 乃亜の耳のそばまで顔を近づけた理央は、低めの囁きを落とす。


「えっち」

「はっ!? 私、そんなつもりじゃ……!」


 それからの理央の責め方といったら、拷問に近かった。お腹を触り続けて散々焦らしては、思い出したように脇腹を思い切りくすぐってくる。


「あはははっ、無理、無理だから、もうやめて!」


 涙目で笑わせられる乃亜。じっくりいじめて楽しそうな理央だが、乃亜はたまったものではない。


「も、無理ってば……お願い、もう……」


 息も絶え絶えに涙目で見上げると、理央の頬に赤みが差した。


 理央の手つきが変わる。スルスルと脇腹に触れられるたび、おかしな声が乃亜の口から出ていく。くすぐられすぎて、身体が過敏になっているようだ。


「あっ、あ……やめて……」


 乃亜の頬にキスを落とすと、理央は拘束を解いた。乃亜を抱き枕のようにしっかり抱きしめて、足を絡めて、今度は幼子を寝かしつけるような手つきでお腹と脇腹を撫でる。

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