「俺は好きだよ、君のこと」
第47話
翌日から、乃亜の本格的なダイエットの日々が始まった。理央が作ってくれた控えめな朝食を摂り、乃亜にとっては非常に厳しい運動メニューをこなす午前中を過ごし、理央が作り置きしてくれた昼食を摂る。
とても美味しいしありがたいのだが、あっさりしすぎた和食が物足りないのも事実。それにごはんは山盛り一杯までと決められてしまっている。
「足りない。お腹すいた……」
食べ終わった瞬間、乃亜は眉尻を下げて呟いた。空腹に耐えかねた乃亜の頭に、悪い考えが浮かぶ。朝一番に体重計に乗ってからというもの、楽観的になってしまっている乃亜だ。体重チェック表を見ながら考える。
(昨日ディナーコース食べたのに、今朝の体重は変わってなかった。運動量が摂取カロリーを上回ったんだ)
相変わらず食に関しては、異様に自制心が弱い。自分に都合良く解釈し、わざわざ昼食を作り置きしてくれた理央の厚意も忘れ、乃亜はスマートフォンに「人気のデザート」と検索ワードを入力する。
「美味しそう……! よし、食べに行っちゃおう。今日も運動頑張ったし、ちょっとくらい大丈夫!」
にんまりとして部屋を飛び出し、念願のスイーツを堪能して帰ってきた乃亜は、満たされたお腹を撫でながらリビングでくつろぐ。
「ケーキすごく美味しかった……運動も息抜きもして、ダイエット順調だよね!」
ソファに寝転がり一人呟くも、ふと視界に入り込む体重計。
(大丈夫、あんなに運動したんだもん。これは体重が減ったことを確認するためよ)
そう自分に言い聞かせて、乃亜は恐る恐る体重計に乗る。瞬間、乃亜は雷に打たれたかのような衝撃を受けた。
「どうして? ケーキ一個食べただけで、こんなに太るの!?」
体重は朝よりも1kg増えている。焦った乃亜はスマートフォンを握り、震える指先で検索ボタンをタップした。表示された検索結果に恐る恐る目を通す。
『一日のうちで体重は0.5〜2kgほど変動します。暴食による体重の変化は、3日後前後に起こります』
「!! うそ、そんな……!」
乃亜がスマートフォンを取り落としかけた瞬間、玄関から誰かの気配。慌てて体重計から降りてソファに飛び乗ると同時に、理央が姿を見せた。
「乃亜ちゃん、ただいま。……どうしたの、ソファで正座して」
「ううん、なんでも!!」
冷や汗をかく乃亜に首を傾げながらも、理央は着替えに行ってしまった。そして戻ってくると、ソファで不自然なまでに姿勢を正している乃亜を見て微笑む。
「じゃ、行こうか」
「へ?」
「へ? じゃないよ、二人で散歩。約束したでしょ」
「あ……」
(そっか、散歩! 頑張れば、きっと食べた分消費できる)
「うん! 行こう!」
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