第37話
「!?」
口の中に流れ込んでくる、シュワシュワした甘い液体を、ゴクリと飲み干した。運動後の体に染み渡る。
「コーラ……?」
乃亜の上から退くと、理央はミネラルウォーターのボトルを乃亜に手渡す。
「お菓子やジュースは、ダイエット中厳禁だから。俺が与える分だけで我慢してね」
ソファに座ってコーラを飲む理央。その隣に腰掛けてミネラルウォーターを飲みながら、乃亜がどうしても気になるのは、一口しか飲めなかったコーラ。美味しそうに飲んでいる理央の姿は目に毒だ。突き刺さるような視線に気づいた理央は、飲むのをやめて乃亜を見た。
「まだ欲しいの?」
「べ、別に? そんなことないよ。ダイエット中だし」
「もっとちょうだいって言ってみなよ。言えたらあげる」
悪戯を仕掛けてワクワクしている子供のように、理央はにやりと笑う。要はキスを強請れと言われているのだ。一瞬躊躇いはしたが、乃亜はコーラの誘惑に負けた。
「もっとちょうだい」
「!」
本当に言うと思わなかったのか、理央は驚いたようだった。向けられる熱っぽい眼差しに怯む。コーラを口に含んだ理央は、思わず身を引こうとする乃亜の後頭部を抑えて、有無を言わさず口付けてきた。
口内に流れ込む刺激的な炭酸と、やわらかく絡み合う舌の感触に溺れる。理央とのキスが甘い味と結びつき、ひたすら甘いイメージに固まっていく。
「ん、ん」
口移しで与えられてはコクコクと飲み干すのを三回ほど繰り返すと、コーラはなくなった。空のペットボトルが床に転げ落ちる。口実をなくしたただのキスは、しばらく続いた。やがて解放された乃亜は、余韻に浸りながら理央を見つめる。
「顔、蕩けちゃってるよ。そんな目で見られたら、俺……」
どこか余裕を失くしたような、切なげな理央の表情に、乃亜はこの先の展開を予感した。女として求められている。自分にはもう起こり得ないと思っていた展開に、ズタボロに傷ついていた女としてのプライドが、歓喜とともに癒される。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます