第36話
「どうしたの? 彼を見返すんだよね?」
「!!」
理央の煽りに、乃亜の闘志に火がついた。必死で起き上がり、脱力する。
「つ、疲れた……今日はもう、終わりで……いいかな……」
はあはあ言いながら床に寝そべる乃亜の上から、優しい声が降ってくる。
「残りは1回でしょ、頑張って」
「ううん、もう無理……できない」
理央はふと真顔になり、乃亜をじっと見つめた。額に手の甲を当てた状態で、乃亜は彼を見返す。
「君の決意、その程度なんだ?」
厳しい台詞に、強くドキリとした。
「自分はこのくらいでいいんだって、妥協して諦めるんだね」
「違う。私、妥協したわけじゃない」
「違うなら頑張らないと。たかが1回かもしれないけど、その1回ってすごく大事だよ」
「そう……かもしれないけど」
「変わりたいなら、自分を甘やかしたら駄目だ。たった1回頑張れないようじゃ、ダイエットも失敗すると思う」
「…………」
確かに理央の言う通りだ。疲れ切って投げやりになっていた乃亜は、唇を噛み締めた。
「私、頑張る!」
理央は優しい目をして、ハンカチで乃亜の額の汗を拭う。
「寝た状態で息を吸って、吐きながら起きてみて。やりやすいと思うよ」
頷いた乃亜は、息を吸って吐き、必死に体を起こした。なんとかノルマクリアだ。疲れ切った乃亜は、床に身体を投げ出し大の字になった。
「はあ、はあ、もうダメ……」
「ちゃんとやれるじゃない。偉い、偉い」
乃亜の頭をヨシヨシと撫でると、息が整うまで、汗を拭って髪を整えて、甲斐甲斐しく世話をする理央。乃亜が少し落ち着いてきた頃、理央は鞄から何かを取り出した。
「約束通り、ご褒美あげるよ。欲しいよね?」
「……?」
ペットボトルに口をつけて、それを一口飲んだかと思うと、理央は乃亜に覆い被さるようにして唇を奪った。
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