第33話
スマートフォンでダイエットについて調べてみるのだが、そわそわしてまるで集中できない。やがて理央が、背中合わせにベッドに入ってきた。
ソファで寝ようかとか、言い出すのも気が引ける。向こうが何もする気がないのに、そんなことを言うのは自意識過剰でしかない。
それでも背中の理央が気になるもの。彼が身じろぎする気配やベッドの軋む音を察知するたび、内心では狼狽えていた。心の中で、そんな自分を笑い飛ばす。
(一人で意識してバカみたい。結婚したらこんな感じなのかな。求められることもなく……)
そして乃亜は拳を握りしめて、決意を固める。
(絶対、痩せてやる。健ちゃんもこの人も、見返してやるんだから!)
悶々と考え込むのに夢中になっていた乃亜は、うっかり寝返りを打った。すると、いつの間にかこちらを向いて横になっている理央と目が合い、たったそれだけでひどく動揺する。乃亜はやや上ずった声を出した。
「なっ、まだ寝てなかったの?」
「君がゴソゴソうるさいからさ」
「あ、ごめん」
謝りながら、乃亜は怪訝な顔になる。
(……私、そんなにうるさかったっけ? こっちを気にしすぎなんじゃ?)
夜の薄暗闇の中、理央は薄く笑みを浮かべた。乃亜が固まった瞬間、理央の腕が伸びてくる。抱き寄せられ、抱き枕のようにぎゅっと抱きしめられた。
「え、あの……」
「君、やわらかくて、抱き心地最高だね」
「…………」
「大丈夫だよ。何もしないから」
子供をあやすかのような、優しく囁く声に逆にムッとした。
(何が大丈夫なの。そんなの、何度も言わなくてもわかってるよ)
すっかり気を悪くした乃亜だが、相変わらず優しく抱きしめてくる、理央の体は暖かかった。心地良い睡魔に襲われ、眠りに落ちていく。
「安心して眠って。自分を抑えるのは簡単なんだ。あの時、君が呼んだ名前を思い出せば、俺は何もできなくなるから」
「……?」
寂しげな声で呟かれた理央の声は、確かに乃亜の耳に入ったのだが、既に半分以上夢の中。乃亜がその台詞の内容を認識することはなかった。
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