第31話

「い、いらない!」

「そう? 君って食に関する話になると、途端に意志が弱くなるんだね」

「そ、それは……」


 痛いところを突かれては恐縮するしかない。


「食事制限だけじゃ時間かかりそうだし、運動も取り入れていかないと……」


 理央は少し考えるような様子を見せた後、乃亜に問いかけてきた。


「体のどのへんが気になるの?」

「まずは二の腕とか」

「このへん?」


 理央は乃亜の二の腕をふにふにと確かめる。


「あ、あの……」

「確認してるだけ。俺が君の体型を管理してあげようかと思って」


(管理って……)


「今の肉付きを知っておけば、痩せたかすぐわかるしね。二の腕の他には?」

「足、かな……太ももからお尻のあたり」

「ここ?」

「っ!」


 太ももを撫でられて、乃亜はピクっと反応してしまった。


「他は?」

「やっぱりお腹」

「お腹周りは、気にしてる人多いよね。多少余計な肉があっても、気にする必要ないと思うんだけど……」


 乃亜のお腹に手を乗せて、よしよしと撫でる理央。


「ひゃっ!?」

「本人にしてみれば深刻だよね。脂肪吸引は、かなりの件数こなしたよ」

「っ、そんなとこ触らないで……」

「あ、今、脂肪吸引したいとか思ったでしょ」


 お腹の肉を弄びながら、理央が言う。だが乃亜は、恥ずかしいのとくすぐったいのとで、それどころではない。気にしている贅肉を男性に触られるなんて、身も消え入る思いだ。

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