第25話

(このロゴって、有名ブランドの……? これ、いくらしたの!?)


 まず驚く乃亜だが、そこに記されたLLという文字に目が行き、複雑な気持ちに支配される。


(確かに間違ってないんだけど……どんな気持ちでこのサイズの服を買ったんだろう)


「気に入らなかった? 絶対君に似合うと思うんだけど。試しに着てみて」


 そう言うと、理央は乃亜の肩に服をかけて、ボタンを上から丁寧にとめていく。着せ終わり乃亜の体を鏡に向けた。


(こんなきれいめの服、着るの久しぶり……)


 鏡に映る自分に驚く。着痩せしているし、いつもより女らしくなったような気がした。


「どう?」

「すごくいい……と思う」

「でしょ? 君に何が似合うか、俺にはよくわかるんだ」


 嬉しそうに顔を緩める理央は、当の乃亜よりもご満悦だ。乃亜はまだ恐縮している。


「でも、この服高かったんじゃ?」

「気に入ってくれたなら、遠慮なく着てよ。俺が勝手に買ってきて、君に押し付けただけだから」

「押し付けたなんてそんな……。ありがとう。見立てが上手いね、女の子に服を贈るのが趣味とか?」


 少しおどけて言った瞬間、理央の表情がムッとしたものに変わる。


「違うよ、別にそんなんじゃない。……ずっと見てたからさ」

「ずっと見てた? 何を?」


 返事の代わりにじっと見つめられ、乃亜はたじろいだ。


(な、何?)


「そろそろお腹すいたでしょ? 今日は君との仮結婚記念に外食でも……」

「えっ!?」

「と思ってたんだけどさ。ケーキをたくさん食べたからお預けね。自炊ダイエットメニューにするから」


 期待を裏切られた乃亜はショックを受け、諦め悪く粘る。


「もうケーキ3個もたべたりしないし……反省してるし、せっかくだから外食でご馳走を……」

「太るよ?」


 キラキラした爽やかな笑顔から圧力を感じて、乃亜は顔をひきつらせた。


(うう、スパルタの予感……)

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