第23話

露出した下着の胸を腕で隠すが、だらしない身体の全ては隠せない。慌てて服を拾おうとしても阻止され、乃亜の心に怒りが湧いた。


「いきなり何……!」

「ケーキ」

「へっ?」

「あんなに食べてたから」


 乃亜はぽかんとした後困惑する。


「だからってなんでこんな……」

「今後は体型を気にしない、自信を持って前向きになるって誓うなら、ダイエットの約束は無しにして、傷跡も治してあげる」

「え……」

「ほら、鏡見て」


 乃亜の後ろに回り込んだ理央は、乃亜の肩に手を置き、顔を鏡に向けさせる。


「絶対気にしません、って断言して」

「そんなの……」

「その隠してる手を退けなよ。胸を張って堂々と生きれるなら、体型なんかどうでもいい。そうでしょ?」

「…………」


 鏡に映った自分の身体と、背後の真顔の理央に追い詰められた気がして、乃亜は唇を噛み締めた。


「……できない」


 蚊の鳴くような声で言って、隠せやしないのに、自分のふとましい体を抱きしめる。


「できないよ、こんな体型を気にしないなんて」

「じゃあもっと努力すべきなんじゃない? 痩せたい、でも食べたいって……食べて太っていじけてるんだ?」

「っ、そんな言い方しなくても……」

「君ってほっぺただけじゃなくて、やってることも子供みたいだね。いい子いい子して抱っこしてあげようか?」


 理央は乃亜の背中から腕を回し、乃亜を抱きしめた。言っている内容と行動が噛み合っていない。小馬鹿にしてからかっているようなことを言いながら、とても優しい抱きしめ方なのだ。


(これが夫婦の真似事? やだ……勘違いしたくないのに)


「ひゃっ!?」


 不意に首筋をペロリと舐められ、乃亜はビクッと体を揺らす。

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