第22話

理央はネイティブレベルの流暢な英語で、バリスタに話しかける。


『俺の妻に何か用ですか』

『君の妻だって? 彼女が?』

『何か問題が?』

『いや、子供に見えたから。すまない、謝るよ。怖い顔をしないでくれ』


 バリスタはすっかりたじろいでいる様子だ。


(何話してるんだろう)


 英語がわからない乃亜は眉を顰める。


 苦笑いのバリスタに背を向けると、理央はさっさと会計を済ませ、乃亜を連れて店を出た。戸惑いながら、スタスタ先を歩いて行く理央についていく乃亜。


 ケーキをどか食いしているところを見られてしまった気まずさから、乃亜は必死に作り笑いながら理央に声をかける。


「すごいね、英語喋れるの?」


 理央は立ち止まり、むすっとした機嫌の悪い顔で振り向いた。


「留学してたからね。……君さ、あの男を気に入ったの?」

「え? いや、別にそういうわけじゃ」

「目配せしたりして、親密みたいだったけど」

「親密なんてそんな。お店で会ったばかりだし」

「俺だって、昨日君と会ったばかりだよ。なのに君は、俺と仮の夫婦になってる」

「それはそうだけど……あの人、ラテアート作ってくれて、SNSに乗せてって……お礼にお店を宣伝しようって」

「そんなのただの口実だよね。もう少し警戒心を持った方がいいって、言ったよね?」

「…………」


 黙り込む乃亜に、理央は不機嫌さを隠そうともしない。お互い無言のまま、マンションへと帰る。


 靴を脱いで玄関に上がった途端、理央は乃亜の手を引いた。


「乃亜ちゃん、来て」

「えっ!?」


 二人でまた鏡の前へ。真顔の理央は、徐に乃亜の服に手をかけ脱がしにかかる。


「ち、ちょっと、なに!?」


 パニック状態に陥る乃亜に構うことなく、乃亜の前ボタンを次々と外し、服を床に落とす。ダボっとしたワンピースタイプの服を脱がされれば、当然心許ない下着姿になった。

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