第20話

「はっ!!」


 そこで急に覚醒し、乃亜は目を見開く。日が傾いたオレンジ色の空が、視界いっぱいに飛び込んだ。


(お昼寝しすぎた……。喉が渇いたし、お腹もすいた。何か食べに行こう)


 立ち上がり、近くに見えたカフェに真っ直ぐ向かった。店内に入ると、ふわりと甘い香りが鼻をくすぐり、食欲をそそる。


 ラテとケーキを注文して待っていると、外国人バリスタが乃亜の前にラテアートを置いた。ハートが連なった見事な出来だ。


「うわあ、かわいい! ありがとうございます!」


 そう言って写真を撮る乃亜の隣から、バリスタはなかなか去ろうとしない。そしてにこやかに話しかけてきた。


「君、可愛いね。気に入ってくれたら、SNSに投稿してよ。店名を入れてくれたら嬉しいな」


(可愛いねって……お店の宣伝のための社交辞令? 素敵なラテアート作ってくれたんだし、貢献しなきゃね)


「はい! もちろんです」


 乃亜はにっこり笑って、SNSに店名とコメントをつけた写真を投稿した。バリスタは意味深な笑みを浮かべて去って行く。


 やがて運ばれてきたケーキを見て、乃亜の顔が緩んだ。分厚いチョコレートでコーティングされたオペラ、生クリームを添えたベイクドチーズケーキに、フルーツたっぷりフルーツタルト。


(チョコのはカロリー高そうだけど、失恋のショックを癒すため!)


 ワクワクした顔でフォークを取る。


(チーズケーキはヘルシー、タルトはほぼフルーツで問題ないよね!)


 大きな口を開けて、乃亜はケーキを口に運ぼうとした。


「いただきまー……」


 今にも食べようかと言う時、乃亜のスマホがけたたましい着信音を鳴らす。画面には「如月理央」と表示されている。

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