第12話

「糸が太くて絞め方がきつかったんだね。切り直して細い糸で真皮縫合。糸は皮膚内に埋まって目立たなくなる」


 黙って聞いている乃亜の瞳が期待で輝いた。


「表面は糸傷ができないように、ゆるく縫合して……大丈夫、綺麗にできると思うよ」

「本当ですか!?」

「二十万円しないくらいかな」


 その台詞に、乃亜の肩ががっくりと落ちる。


(なんだ、タダでやってくれる、ってわけじゃないんだ)


「そのくらいかかるのは知ってました」


 乃亜はうつむき、膝の上の手をぎゅっと握りしめた。


「美容外科にカウンセリングに行ったこともあります。でもそんなお金出せないから、このままなんです」

「話は最後まで聞きなよ。条件を満たせば、君に金銭的負担が出ないようにやってあげるつもりなんだ」


 乃亜はハッと顔を上げる。


「条件って……?」

「ダイエットを成功させること」

「……ダイエット? なんでそんなこと……」

「ちょっとこっちに来て」


 眉根を寄せた乃亜は、クローゼットの前にある、姿見の前に連れて行かれた。理央は手短に告げる。


「脱いで」

「えっ!?」


 唐突な指示に目を白黒させる乃亜だが、理央は涼しい顔でフッと笑った。


「まさか君、警戒してる? もし襲うつもりなら、昨夜のうちに済ませてるよね」

「…………」


(やっぱり、最後までしなかったんだ。そうだよね。誰も私のことなんて……)


 自分が惨めに思えてたまらなくなった乃亜は、ヤケクソで服を脱ぎ捨てる。

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