私は、変わりたい

第11話

「昔事故に遭ってから、何もかも上手くいかなくて……こんなに太って、学校も仕事も恋愛も失敗ばかりで」

「…………」


 苦笑まじりの乃亜の話を、理央は真顔で聞いている。


「今回は婚約者に呼ばれて来たんです。頑張って痩せてきたけど、痩せ方が足りなくてフラれちゃいました」


 初対面の理央に洗いざらい話してしまいながら、乃亜は泣きたい気分で目を伏せた。


「この傷跡さえなければ、私は昔みたいに痩せてて、結婚だって……傷跡さえなければ私は、もっと幸せに……」


 唇を噛み締める乃亜。その様子を真顔で眺めた後、理央は表情を厳しくした。


「顔の傷跡は、確かに辛いことだったと思う。でも怪我や病気で、突然障害を負う人だっているんだよ」

「……!」

「傷跡があるから上手くいかないなんて、そんなはずない。君は全部傷跡のせいにして、現実から逃げてない?」

「そんな……こと……」


 ない、と言いかけて、言えなかった。図星だったのだ。理央は容赦なく続ける。


「逃げてる限り君は変われないし、幸せになれない。痩せたい、変わりたい。あの寝言が君の意思だよね?」

「それは……」

「どんな人間だって変われるよ。目を逸らさずに現実を受け止めて、最後まで逃げなければね」

「…………」

「その傷跡だって、俺が綺麗に治してあげる」

「えっ!? 治してくれるんですか?」


 目を大きく見開き、前のめりになって食いつく乃亜。


「俺はそのための医者だから。よく見せてくれる?」

「はい……!」


 乃亜は理央に顔を寄せた。その勢いに苦笑しながら、理央は傷跡を観察する。傷跡の上をそっと辿る指先に、乃亜の体がピクリと震えた。

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