一線を超えちゃっ……てない!?

第6話

「うー……あたま、いたい……」


 ガンガンする頭を抱えながら、乃亜は薄く目を開いた。どうやら二日酔いだ。


(私、いつの間に寝てたの?)


 ベッドに寝ているのだが、全く知らない部屋だ。洒落たインテリアで飾られた寝室、フカフカのベッド。


「……?」


 状況が全くわからず、乃亜は瞬きを繰り返した。身を起こせば裸なことに気づき、一瞬驚く。


(ああ、そっか。私、健ちゃんの部屋に来たんだっけ?)


「はい、水」

「あ、ありがと健ちゃ……」


 ミネラルウォーターのボトルを受け取ったところで、乃亜はフリーズした。一緒にベッドに入っているのは、健ではなく知らない男性だ。ラフなトレーナーに黒のテーパードパンツをしっかり履いている。問題なのは、対する乃亜が素っ裸なことだ。


「えっ!? 健ちゃんじゃなかったの!?」


 叫ぶや否や、乃亜は布団を手繰り寄せた。


(やだ、太った身体見られちゃった! 恥ずかしさで死ねそう!)


 男性から布団を完全に奪い取り、体にぐるぐる巻きにする。


(この状況ってまさか……私、すっかり健ちゃんと思い込んで、大胆に迫っちゃったような?)


「随分酔ってたみたいだったけど、大丈夫?」


 そう言って、にっこりと笑う爽やかな男性。その整った容貌に、乃亜は見惚れた。


(かっこいい……すごくタイプの顔。健ちゃんの顔は平凡だったし、新鮮……)

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