第47話 猛虎
塁は戦いに備え、再び足利直義の軍に合流した。彼の手には「飛龍の駒」があり、その強大な力を信じていたが、南朝の動きは予想以上に早かった。彼らが狙っているのは、ただ一つの駒ではなく、さらに強大な力を秘めた「猛虎の駒」だという情報が伝わった。
「猛虎の駒…?」塁は直義に尋ねた。
「そうだ。飛龍の駒と対を成す、もう一つの古代の力。猛虎の駒には、荒々しい力が宿っていると言われており、それを得た者は恐るべき戦士となる」
塁は考え込んだ。もし南朝がその駒を手に入れたなら、戦局は一変し、足利軍の勝利は絶望的になるかもしれない。塁は直義の前に立ち、決意を固めた。
「俺がその駒を探し出します。そして、南朝に渡させない」
直義は頷き、塁にその任務を託した。
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数日後、塁は密かに猛虎の駒が隠されているという伝説の地へと向かった。そこは古い寺院の廃墟で、厳重な結界で守られていると言われていた。荒れ果てた道を進む彼の前に、突然、強烈な気配が現れた。
「お前か、飛龍の駒を持つ者…」
声の主は、剛毅な表情をした武将だった。彼の名は新田義貞。南朝の一翼を担う武士であり、猛虎の駒を追い求めているという噂が絶えない人物だ。
「新田義貞…!」塁は構えを取り、目の前の武将に対峙した。
義貞は鋭い目つきで塁を見つめ、静かに語った。
「お前の覚悟はわかる。しかし、猛虎の駒は簡単には手に入らぬ。その力を制御することができるのは限られた者のみ。お前がその駒を持つ資格があるのか、試させてもらうぞ」
義貞は刀を抜き、瞬時に斬りかかってきた。塁はその速度に驚きながらも、「飛龍の駒」の力を発動し、義貞の攻撃をかわした。風を操るような動きで、義貞の攻撃を避けつつ反撃を繰り出す。
激しい戦いが繰り広げられた。義貞の猛々しい剣技と、塁の駒の力を駆使した巧妙な動きがぶつかり合う。互いに一歩も譲らぬ攻防が続き、周囲の木々や岩が彼らの戦いの余波で崩れ落ちた。
そして、ついに義貞は攻撃を止め、静かに刀を収めた。
「見事だ、塁。お前にはその力を使いこなすだけの覚悟と技がある。だが、この先は更に困難な道が待っていることを忘れるな」
義貞は塁を認めたようで、厳しい表情を少し和らげた。
「お前と共に戦うつもりはないが、この猛虎の駒は、俺も探し求めるものだ。共に手に入れるために戦おう」
二人は一時的に手を組むことになった。新田義貞と塁、二つの時代の戦士が、強大な「猛虎の駒」を巡る冒険を共にすることを決意したのだ。
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寺院の奥深くに進むと、強力な結界が彼らの行く手を阻んだ。古代の文様が光り輝き、猛虎の力を封じているようだった。塁と義貞は力を合わせ、その結界を破ろうと試みた。
塁が「飛龍の駒」を掲げ、義貞が渾身の一撃を放つと、結界は一瞬にして砕け散り、猛虎の駒がついにその姿を現した。
「これが…猛虎の駒か」
駒は猛々しい光を放ち、その圧倒的な力を感じさせた。塁はその駒を手にし、新たな覚悟を胸に誓った。この駒の力を使い、さらなる戦乱に立ち向かうのだと。
これから始まる新たな戦いは、ただの戦争ではない。時空を超え、歴史を変える大きな運命が、塁と義貞を待ち受けていた。
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