第43話 飛車

 塁は足利直義の軍で数々の戦いを経験し、仲間たちと深い絆を結んでいた。しかし、南北朝時代での生活が安定してきたある日、彼の手に新たな駒が届けられる。それは「飛車」の駒だった。かつての「横行」とは異なる強力な力を秘めた駒で、塁はその力を感じ取った。


「この飛車の力は…」


 手にした瞬間、塁の周囲に再び歪みが生じ、彼は強い引力に引き寄せられるように時空を超え、飛鳥時代へとタイムスリップしてしまった。



---


 目を開けた塁の目の前には、古代の日本が広がっていた。飛鳥の時代、まだ大和朝廷が権力を握り、文化が芽吹き始めたばかりの頃だった。彼は目の前に広がる光景に一瞬呆然としながらも、すぐに状況を把握した。


「ここは…飛鳥時代か。」


飛鳥の街並みや、荘厳な寺院の姿が彼の前に広がっていた。だが、すぐに不穏な空気を感じ取った。人々が怯えた様子で走り回っている。どうやら、何か大きな騒動が起こっているようだ。


「なんだ、この騒ぎは…?」


塁は騒動の元へ向かい、そこで大和の軍勢と謎の集団が激しい戦いを繰り広げているのを目撃した。彼は思わず口元を引き締め、戦場に駆け込む。


「お前たち、何をしているんだ!」


塁の声が響いた瞬間、両軍の兵士たちが一斉にこちらを向いた。しかし、誰もが塁の存在に戸惑っているようだった。異なる時代から来た彼の姿は、この時代には明らかに異質だったからだ。


その時、一人の武将が馬に乗って現れ、塁に鋭い目を向けた。


「お前は何者だ?この戦場に何の用だ!」


武将の名は、飛鳥時代の大和を統治していた人物、大王の忠臣として名高い蘇我入鹿だった。彼は不審者と見た塁を怪しみながらも、その力を感じ取ったのか、すぐに戦う姿勢を見せた。


「俺の名は塁。何者か、いずれ教えてやる。だが、まずはお前を止める!」


塁は飛車の駒を手にし、その力を解放した。駒が発光し、彼の体に新たな力が宿る。塁は飛車の力を使って高速で戦場を駆け抜け、瞬時に敵兵を撃退していく。彼の動きは人間離れしており、蘇我入鹿の目にも驚愕の色が浮かんだ。


「な、なんだこの力は…!」


蘇我入鹿は剣を振りかざし、塁に向かって突進してきた。しかし、塁は冷静に対処し、飛車の力で空中を自在に飛び回りながら攻撃をかわしていく。そして、隙を突いて入鹿の剣を弾き飛ばした。


「この時代にも争いが絶えないのか…だが、俺はこの手で歴史を変えてみせる!」


塁は決意を胸に抱きながら、入鹿との戦いに挑み続けた。飛車の力を使いこなすことで、彼は次第にこの時代の運命に深く関わっていく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る