第42話 忠誠

 塁は現代での辛い現実に打ちひしがれながらも、再び南北朝時代へタイムスリップすることを決意した。彼は横行の駒を手に握りしめ、目を閉じて心を落ち着かせた。駒の力が発動すると、彼の周囲が歪み、気がつくと再び南北朝時代の戦乱の中に戻っていた。


 塁はその場に立ちすくんでいたが、すぐに周囲の騒動に気づいた。村が賊に襲われ、混乱の中で村人たちが逃げ惑っている。塁は無我夢中で賊の集団に突っ込み、持っていた棒を武器代わりに応戦した。


「止めろ!お前たち!」


 彼の声は震えながらも強く響き、塁の気迫に圧倒された賊たちは一瞬動きを止めた。しかし、それも束の間、賊は再び攻撃を開始する。塁は必死に防戦し、何度も倒されそうになったが、その度に立ち上がり、戦い続けた。


 その時、後方から馬に乗った一隊が現れた。率いていたのは足利直義だった。彼の精鋭たちが素早く賊を囲み、戦況は一気に逆転した。塁も勇敢に戦い続け、ついに賊は全滅した。


「お前、なかなかやるではないか」


 戦いが終わった後、直義が馬から降りて塁に近づいた。彼は塁の顔をしげしげと見つめ、感心した様子で笑みを浮かべた。


「確か、お前は…この前、助けた者だな?」


「はい。再びお目にかかれて光栄です」


 塁は深く礼をした。直義は頷き、塁の勇気と戦いぶりを称賛した。


「お前のような者が、今の時代には必要だ。どうだ、我が軍に加わらぬか?」


 その申し出に塁は驚いたが、同時に胸が熱くなった。現代で味わった挫折と孤独とは対照的に、ここでは自分が必要とされていると感じた。


「ぜひ、お願いします!」


 塁は即座に答え、直義の軍に加わることを決意した。こうして彼は、再び戦乱の時代を生き抜くため、新たな仲間と共に足利直義の下での活動を始めた。自分の運命を変えるため、そして失われた何かを取り戻すために。


 この物語を描いている俺は直義のダチだ。

 直義の奥さんの本光院は、まさに波乱万丈の人生を送った女性って感じだね。足利直義の奥さんとして、南北朝時代の荒波に揉まれながらも、しっかりと家族を支えたタフな女性だったんだ。


 そもそも彼女は、渋川貞頼っていう武士の娘で、名家に生まれたわけ。兄貴の渋川義季もなかなかの武士で、中先代の乱で命を落とすんだけど、こういう環境で育ってるからこそ、本光院も芯の強い女性になったんだろうね。


 で、運命の結婚相手があの足利直義。彼は幕府の超重要人物で、兄の足利尊氏と一緒に室町幕府を作り上げた人。幕府を動かすには政治力が必要だけど、直義がその裏で苦労してた時、本光院もいろいろとサポートしてたんだろうなぁ。


 そして、本光院の人生の大きなイベントの一つが、息子の如意丸を産んだこと。京都で出産して、当時41歳っていう高齢出産だよね。それでも無事に元気な子を産んで、直義も安産祈願で神社にお参りに行くくらい心配してたんだ。でも、この家族の幸せな瞬間も、幕府内のゴタゴタに巻き込まれていくんだよね。


 さらに面白いのが、本光院が日野名子っていう女性と交流があったこと。彼女らは和歌を詠み合ったりしてて、公の場で和歌をやり取りするなんて、教養のある女性だったんだろうね。この辺も、ただの奥さんじゃなくて、社交的で頭のいい一面が見えるよね。


 結局、彼女がどんな最期を迎えたかはよく分かってないんだけど、足利家や幕府内の権力争いが激しくなる中で、直義を支え続けたんだろうなぁ。苦しい時代でもしっかりと家族を守ってた本光院、今で言えばスーパーウーマンみたいな存在だったんだろうな。


 まぁ、そんな感じで、本光院の人生は直義と共に戦う一方で、彼女自身も時代を駆け抜けた強い女性だったってことだね。




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