第39話 北朝の拳
南北朝時代に戻った塁と梨花は、再び不穏な空気に包まれた時代の波に飲み込まれていった。彼らは不老の実の謎と、過去に与えてしまった影響を修正するために、慎重に行動していた。しかし、歴史が動く時代に足を踏み入れている以上、予期せぬ出来事が彼らを待ち受けていた。
ある日、二人は山道を歩いている最中に賊に襲われた。荒くれ者たちは、二人を囲み、金品を奪おうと企んでいた。梨花が恐怖に震えながら後退する中、塁は冷静さを保とうとしていたが、多勢に無勢だった。
「梨花、下がってろ!」塁は身構えたものの、彼らの武装を見て内心焦りを感じた。
賊たちが一斉に襲いかかろうとした瞬間、突然、馬の蹄音が響き渡った。鋭い声が山中にこだました。
「そこまでだ!無法者ども、覚悟しろ!」
馬に乗った武士たちが現れ、その先頭に立つのは足利直義だった。彼は鋭い眼差しで賊を睨みつけ、瞬く間にその場を制圧するべく駆け寄った。直義の部下たちは、賊を次々に打ち倒し、あっという間にその場を平定した。
塁と梨花は驚きと安堵の入り混じった表情で、その光景を見つめていた。
「ご無事ですか?」直義が二人に近づき、優しく声をかけた。
塁は息を整えながら頭を下げた。「助けていただき、ありがとうございます。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
直義は少し微笑んでから答えた。「私は足利直義。この辺りを見回っていたところだ」
「足利直義…あの足利の…」塁は直義の名前を知っており、その影響力を理解していた。
「お前たち、何者だ?この時代には珍しい風貌をしているな」直義は鋭い目で二人を見つめた。
塁は少しの間考えた後、嘘をつくよりも正直に話す方が安全だと判断した。「実は、我々は未来からこの時代に来た者です。不老の実の謎を追い、その力を解明しようとしているのです」
直義は驚いたような表情を見せたが、すぐに冷静に戻った。「未来から…面白い。だが、どの時代においても悪事を働く者はいる。この世界を旅するなら、気をつけるべきだな」
「その通りです、足利様」梨花が直義に深く礼をした。「私たちの無力さを痛感しました。ありがとうございます」
直義は一瞬考え込み、何かを決意したようだった。「お前たちの旅路がどれほど重要かはわからないが、しばらく私のもとで行動するのが良かろう。安全を確保するためにも、共に動くべきだ」
こうして、塁と梨花は一時的に足利直義の保護下で動くことになった。直義は単なる救援者ではなく、塁と梨花の旅において重要な役割を果たす運命にあるようだった。
それから数日間、二人は直義の指示で安全な場所に滞在しつつ、不老の実と歴史の関係をさらに掘り下げていった。そして彼らが直義と行動を共にする中で、次第に塁は彼の複雑な性格や、直義が抱える大きな運命に気づき始めるのだった。
しかし、その中でまたしても予期せぬ陰謀が動き始めていた。
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