料理の変人

第38話 解雇

　現代――

　梨花は、塁と共に南北朝時代から戻った後、すぐに現実の生活に戻ろうとしていた。だが、戻った途端、彼女を待っていたのは厳しい現実だった。

「梨花さん、どういうことですか？連絡もなしに何日も休むなんて！」

　職場に戻ると、パティシエとして働いていた店のオーナーが険しい表情で彼女を迎えた。梨花は一瞬、頭が真っ白になった。塁との冒険で時間がどれだけ経ったか、まるで実感がなかったのだ。

「すみません…本当に申し訳ないんです。説明は…」

　彼女が言い訳をしようとしたが、オーナーは聞く耳を持たなかった。

「そんな説明、今さら必要ありません。あなたがどこにいたにせよ、無断欠勤なんて店の規則に反します。今までの貢献には感謝しますが、これ以上は無理です。今日限りで解雇です」

　その言葉に、梨花の心は激しく揺れた。タイムスリップで得た経験や冒険の代償が、こうして目の前に現れたことに、現実が重くのしかかったのだ。

「そんな…」

　梨花は何度も心の中で繰り返した。梨花は仕事を失った喪失感を抱えながら、塁に連絡を取った。彼の返事はすぐに返ってきた。

「今すぐ会おう。重要な話がある」

　梨花は不安と期待が入り混じった気持ちで塁の待つ場所へ向かった。南北朝時代から戻ってからというもの、塁もまた別の問題に直面しているように見えた。彼が何を話そうとしているのか、梨花は察しきれなかった。

　二人はいつものカフェで顔を合わせた。塁の表情はいつもと違い、どこか沈んでいた。

「梨花…パティシエの仕事、解雇されたんだろう？本当にすまない」

　塁の言葉に梨花はうなずいたが、彼を責める気にはならなかった。冒険が楽しかったこと、そしてそれが何か意味のあることだと信じていたからだ。

「いいの、塁。私も分かっていたことよ。仕事を失ったのは悲しいけど、今はあなたと一緒にやってきたことの方が大切だと思ってる。不老の実の謎も、あなたの未来も」

　しかし、塁は重い口調で続けた。

「それが、俺も悩んでいるんだ。横行の駒を手に入れたことで、南北朝時代に自由に行き来できるようになった。でも、それが俺たちにどんな影響を与えているのか…最近、不安があるんだ。過去を変えすぎたかもしれない」

「過去を変えすぎた？」

「そうだ。南北朝時代での行動が、未来に影響を与え始めている気がする。小さなズレがいくつも積み重なって、俺たちが今いる現実も変わってしまうかもしれない」

梨花はその言葉にハッとした。彼女の解雇も、ひょっとしてその影響の一つなのかもしれないと考えた。

「じゃあ、私たちはどうすればいいの？」

「もっと慎重に行動しないといけない。それに、不老の実の謎を解くことだけでなく、俺たちが行った行動が本当に未来にどんな影響を与えているのか確認しなければならない。過去に戻るたびに、新たな時間軸が生まれているかもしれないから」

　二人は、再び重大な決断を迫られていた。塁の持つ駒の力、不老の実の謎、そして過去と未来のバランス。それらが複雑に絡み合い、二人は新たな段階へと進むことを余儀なくされた。

「これからどうする？」梨花は問いかけた。

塁は一瞬考え、決意したように答えた。

「もう一度、南北朝時代に戻って確かめよう。そして、もし過去に影響を与えすぎているなら、それを修正する。梨花、もう一度一緒に来てくれないか？」

　梨花は仕事を失った喪失感を抱えながら、塁に連絡を取った。彼の返事はすぐに返ってきた。

「今すぐ会おう。重要な話がある」

　梨花は不安と期待が入り混じった気持ちで塁の待つ場所へ向かった。南北朝時代から戻ってからというもの、塁もまた別の問題に直面しているように見えた。彼が何を話そうとしているのか、梨花は察しきれなかった。

　二人はいつものカフェで顔を合わせた。塁の表情はいつもと違い、どこか沈んでいた。

「梨花…パティシエの仕事、解雇されたんだろう？本当にすまない」

塁の言葉に梨花はうなずいたが、彼を責める気にはならなかった。冒険が楽しかったこと、そしてそれが何か意味のあることだと信じていたからだ。

「いいの、塁。私も分かっていたことよ。仕事を失ったのは悲しいけど、今はあなたと一緒にやってきたことの方が大切だと思ってる。不老の実の謎も、あなたの未来も」

しかし、塁は重い口調で続けた。

「それが、俺も悩んでいるんだ。横行の駒を手に入れたことで、南北朝時代に自由に行き来できるようになった。でも、それが俺たちにどんな影響を与えているのか…最近、不安があるんだ。過去を変えすぎたかもしれない」

「過去を変えすぎた？」

「そうだ。南北朝時代での行動が、未来に影響を与え始めている気がする。小さなズレがいくつも積み重なって、俺たちが今いる現実も変わってしまうかもしれない」

梨花はその言葉にハッとした。彼女の解雇も、ひょっとしてその影響の一つなのかもしれないと考えた。

「じゃあ、私たちはどうすればいいの？」

「もっと慎重に行動しないといけない。それに、不老の実の謎を解くことだけでなく、俺たちが行った行動が本当に未来にどんな影響を与えているのか確認しなければならない。過去に戻るたびに、新たな時間軸が生まれているかもしれないから」

二人は、再び重大な決断を迫られていた。塁の持つ駒の力、不老の実の謎、そして過去と未来のバランス。それらが複雑に絡み合い、二人は新たな段階へと進むことを余儀なくされた。

「これからどうする？」梨花は問いかけた。

塁は一瞬考え、決意したように答えた。

「もう一度、南北朝時代に戻って確かめよう。そして、もし過去に影響を与えすぎているなら、それを修正する。梨花、もう一度一緒に来てくれないか？」

　梨花は深く息を吸い、塁を見つめた。彼の瞳にある不安と覚悟が伝わってきた。そして彼女もまた、同じ思いで塁にうなずいた。

「もちろん、あなたと一緒なら、どこへでも行くわ」

　二人は再びタイムスリップの旅に身を投じる準備を始めた。今度は未来を守るために、そして失ったものを取り戻すために。