第37話 竜王
横行の駒を手に入れたことで、塁は次元を超える新たな力を手に入れた。その力は、時間をも超越し、歴史の異なる時代に自らを送り出す能力だった。駒の力を完全に掌握した塁は、次の目的地として南北朝時代に足を踏み入れることを決めた。
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南北朝時代――
塁が到着したのは、南北朝時代の混乱期だった。足利尊氏が幕府の権力を握るために南朝と北朝が激しく争っていた時代である。戦火が広がる中、塁はこの時代の混沌の中で、さらに力を得るために探索を続けた。
横行の駒がもたらした力は、ただの戦士としての力ではなかった。時間や空間の枠組みを超えて移動することで、歴史上の重大な瞬間に介入し、新たな駒や力を手に入れるための手段でもあったのだ。
「この時代には、まだ見ぬ力が隠されているはずだ」
塁はそう自らに言い聞かせ、南朝の拠点へと向かった。南朝の皇子や武将たちが集まるその地で、さらなる強大な駒が眠っているという伝説があった。駒は「竜王の駒」と呼ばれ、その力を手にした者は圧倒的な破壊力を得ると噂されていた。
南朝の軍が足利軍と戦う準備をしている最中、塁は彼らの間に入り込んだ。現代から来た者とは思えない風貌に加え、彼が放つ異様な気迫に南朝の兵士たちは驚き、道を開けた。
「竜王の駒はどこにある?」
塁は南朝の有力者に問いかけたが、彼らはその存在について語ることを恐れていた。しかし、塁の鋭い視線が次第に彼らの口を開かせた。
「…それは、山中の古い寺に封印されている。しかし、その駒には呪いがかけられており、手に入れた者はその代償として、己の魂を捧げねばならないと言われている」
塁はその言葉に少しも怯むことなく、寺への道を指示させた。彼にとって、駒を手に入れることこそが最優先であり、どのような代償であれ、力を得るためならばそれを恐れる理由はなかった。
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寺に到着した塁は、かつて横行の駒を手に入れた時と同じように、駒が強烈な力を放っているのを感じ取った。竜王の駒は、その名の通り、神々しい力を帯び、塁の手を引き寄せるかのように輝いていた。
「これが…竜王の力か」
塁は躊躇なく駒に手を伸ばし、その瞬間、激しい閃光が彼の全身を包んだ。駒の力が彼に流れ込むと同時に、彼は巨大な力を感じた。竜王の力はすさまじく、瞬時に敵を打ち砕く破壊の力であった。
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その後、塁は南北朝時代の戦乱の中で竜王の力を駆使し、数々の戦場を駆け抜けた。彼の姿はまるで戦神のようであり、戦場で敵味方を問わず畏怖された。しかし、力を手にした塁は、次第にその力に飲まれ、戦いの快感と支配欲に囚われていく。
そして、その時代の中で、塁はまた一人の女性と出会う。南朝の武将の娘であった京子は、塁に強く惹かれ、彼に寄り添うようになった。だが、それはまた、梨花への裏切りであった。
「俺は、何度同じ過ちを繰り返すんだ…」
塁は心の中でそう嘆きながらも、力と欲望に翻弄され続けていた。南北朝時代で得た新たな力と、浮気という過ちが、彼をさらに深い迷いの渦に巻き込んでいった。
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