第19話 歩☗

 梨花は、平安京の若宮大路を歩いていた。街は活気に満ちていたが、その中には不穏な空気が漂っていた。突然、彼女の前に現れたのは一団の歩兵だった。彼らは無言で梨花を取り囲み、敵意を露わにして剣を構えた。


 梨花は瞬時に戦闘態勢に入る。彼女は日々の訓練を思い出し、素早く動き出す。歩兵たちは数で押し切ろうとするが、梨花の機敏な動きと正確な剣術の前に、次々と倒れていった。彼女の剣は迷うことなく、相手の隙をつき、冷静に対処していく。


 激しい戦いの後、全ての歩兵を打ち倒すと、梨花は息を整えながらその場に残された物を探し始めた。そこで彼女が見つけたのは、一つの「歩」の駒だった。歩兵を象徴するその駒は、戦の証としてそこに置かれていたかのようだった。


 梨花はその「歩」を手に取り、しっかりと握りしめた。それは、単なる駒ではなく、彼女がこれから直面するであろう大きな戦いの序章を示すものだった。歩の駒は、彼女にとって次なる試練を予感させるものであり、彼女の使命感をさらに強めるものだった。


 塁は、静かな森を抜け、鎌倉時代の城跡に辿り着いた。時は移り変わり、かつての戦場は風化していたが、彼の目はそこに隠された歴史を見逃すことはなかった。歩を手に入れるという使命が、塁の心を奮い立たせていた。


 城跡の石垣に沿って歩くと、何かが足元で光った。それは、時代に埋もれたかのようにひっそりと眠っていた「歩」の駒だった。鎌倉武士たちが命をかけた戦いの名残か、その駒は重厚な存在感を放っていた。


 塁は駒を手に取り、指先でその重みを感じた。これが何を意味するのかを直感的に理解した彼は、それを大切に懐にしまい、目を閉じた。鎌倉の風が静かに吹き抜け、彼の決意をさらに強固にした。


 この「歩」は、単なる駒ではなく、彼が歩む道を示す鍵となるものだった。戦乱の時代に生きた者たちの意志が宿るこの駒は、塁にさらなる戦いを予感させた。


 前九年の役は、東北地方での大規模な戦乱の中で、右京は清原氏の武将として、その地位を強めた。右京は清原光頼の信頼を得た一人であり、戦の趨勢を左右する重要な局面で活躍することとなる。


 康平5年(1062年)の春、頼義が苦戦を続ける中、清原武則が総大将として出羽国から軍勢を率い、遂に安倍氏に対して全面的に参戦した。右京はその精鋭部隊の指揮を任され、黄海や厨川の戦いで大きな役割を果たす。彼の部隊は、抜群の機動力と統率力を発揮し、頼義軍とともに安倍貞任の陣を攻め立てた。


 右京の戦術的な才能は特に、敵の補給路を断つ作戦において発揮される。彼は地形を巧みに利用し、安倍軍の兵站を寸断。これにより、安倍氏は補給が滞り、次第に戦力を削がれていく。これが決定打となり、清原軍と頼義軍は安倍軍の主力を撃破する。


 最終的に、右京の計略と指導力により、清原氏の勝利が決定的となり、安倍貞任は投降。前九年の役は、頼義と清原氏の勝利に終わり、東北地方の勢力図は大きく塗り替えられることとなる。






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